研究実績の概要 |
本研究課題によって、マツバラカサゴ属は主上顎骨の形態によって2つの類似種群(species complex)で構成されることが分かった(中央表面に隆起線があるvs.表面は滑らかで隆起線がない)。平成26年には前者には、Neomerinthe erostris (Alcock, 1896)(タイプ産地:スリランカ)が有効種として認められ、Neomerinthe gibbifrons (Fowler, 1938)(フィリピン),Neomerinthe rotunda Chen, 1981(台湾),Neomerinthe bathyperimensis Zajonz and Klausewitz, 2002(紅海)の3名義種はN. erostrisの新参異名であることが明らかになった。平成27年度はもう一方の類似種群に含まれる14名義種を調査した。これら14名義種は2つの形質の組み合わせによって3つのグループに分類できることが明らかになった。第1グループは、涙骨側棘と第2前鰓蓋骨棘が欠如する、第2グループは涙骨側棘を有するが第2前鰓蓋骨棘が欠如する、第3グループは涙骨側棘が欠如するが第2前鰓蓋骨棘を有することで定義される。このうち、本年度では第1グループの分類学的位置づけを検討し、これまでタイプ標本1個体のみが知られていた種、Neomerinthe pallidimacula (Fowler, 1938)(タイプ産地:フィリピン)が有効種であることを証明することができた。本名義種の追加個体として、南太平洋のWallis and Futuna Islandsの水深245-400 mから1個体が得られ、タイプ標本と追加標本に基づき、本種の再記載を行った。平成27年度中に10名義種のタイプ標本調査を終えることができた。現在、各名義種の有効性・異名関係、分布域、地理的変異、性的二型、および成長に伴う形態変化の調査・解析を行っている。
|