【目的】2回の高温処理によるホンモロコ受精卵の卵割阻止率向上を目的に、条件のさらなる検討を行った。1回目の高温処理のタイミングとして、昨年度の受精後25分、30分、35分に、受精後15分と20分の場合を加え最適時期を検討するとともに、処理前後の卵の細胞学的状態を調べた。 【方法】卵はHCGによる催熟で得、乾導法により媒精して、20℃の飼育水で接水し受精、同温度で培養した。高温刺激は41℃の温水に1分間浸漬とした。1回目処理(F-HST)は受精後15分(F15)、F20、F25、F30、F35のいずれか、2回目処理(S-HST)は、F-HST終了後5、10、15分のいずれかにそれぞれ行った。各実験区の1日後の生存率、孵化率を比較するとともに、孵化個体は純エタノールで固定しPloidy Analyzerで倍数性を判定した。また、各高温処理完了直後と5、10、15、20、25分後の卵をブアン液で固定し、各卵を10 μm厚切片としてHE染色し、組織学的に観察した。 【結果】今年度F15とF20を加えたが、それらを比較に加えても、受精後25分に1回目の処理を行い、1回目処理完了から15分後に2回目の処理を行った試験区(F25S15)で最も高い倍数化率が示された(46.1%)。この試験区では、核および分裂装置の動態について大きく分けて3つのパターンが観察された。そのうちの1つに、2回目処理完了直後、第一細胞周期時点で微小管は萎縮し、極が1つとなるパターンが観察された。このパターンでは、その後も単極のままで染色体は分離できずに1つの極に集まった。その後それぞれがカリオメアを形成し、後に大きな核を形成した。このような卵では第一卵割が阻止されたと考えられた。このことによって、従来の1回の処理では低頻度であった卵割阻止が、高温処理を2回繰り返すことで比較的高い頻度で成功するに至ったものと思われた。
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