今年度はまず、液体窒素温度における蛍光寿命測定を試みた。浜松ホトニクス製の小型蛍光寿命測定装置(Quantaurus-Tau)を使用した。励起光には波長483 nmのパルスレーザを用いた。この波長の光は主としてフィコエリスリンで吸収される。蛍光スペクトルでは液体窒素温度ではクロロフィルaに起因する720 nm のピーク強度は非常に強くなることが明らかになっている。フィコエリスリンに起因すると思われる蛍光波長の580 nmのピークの平均蛍光寿命は常温のとき約0.03nsに対して液体窒素温度では0.26 nsと大きくなった。また、クロロフィルaに起因する720 nm のピークの蛍光寿命は常温のとき約0.39nsに対して液体窒素温度では1.7 nsと大幅に増加した。液体窒素温度ではクロロフィルaに起因する720 nm の蛍光強度が大幅に強くなり、720 nm のピークの蛍光寿命が増加したことから、液体窒素温度において、フィコエリスリンからクロロフィルaへのエネルギー移動はスムーズに行われているが、クロロフィルaでの活性が低いことが示唆される。 また、光合成活性の評価と併せて、成分分析を行うための振動遷移測定の準備実験として、スサビノリのラマンスペクトル測定を試みた。励起波長532nmから633nmでは蛍光が強くラマン散乱によるピークが観測されなかったが、励起波長785nmの場合には蛍光強度が弱くなり、蛍光に重畳して1150 cm-1、1300 cm-1、1500 cm-1、1600 cm-1 付近にラマン散乱によるピークが観測された。
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