研究実績の概要 |
顕微注入の機会を増やすためトラフグの早期催熟を試みた。11月中旬に20℃から約10日間かけ15℃まで冷却し16日間維持した後、12月上旬から0.5℃/2週間で温度を上げ、2月上旬から17℃を維持した。日長は自然日長とした。3月上旬に雌3尾に対し、カニューレにより卵径を確認したところ約800-1,000μmであった。各4-5kgの体重に対し、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモンを2,500IUで1ないし2回注射投与したところ、当初の卵径1,034μmの個体では初投与から4日後、936μmの個体は12日後、857μmの個体は23日後に排卵が確認された。時期はずれたものの全3尾で約1-2ヶ月早期採卵することができた。9種のSCPP遺伝子に対するCRISPR/CasのガイドRNA全12種の顕微注入を行った。受精2日後の卵からDNAを抽出し、各遺伝子のアンプリコンDNAに対してHMA解析を行った。各ガイドRNAの切断活性は、SCPP3A-2、3B-1、3B-2、3C-1、4、SPARCについては強く、SCPP1、2、3A-1、3C-2、5、SPARCL1 については弱かった。SCPP5に対するガイドおよび人工ヌクレアーゼRNAをトラフグ受精卵およそ500個に顕微注入を行った。ふ化直前の発生率は35.5%で、ふ化後2ヶ月齢において変異導入候補稚魚50尾が得られた。体長5-7cmでタグを打ち、HMA法により変異導入個体7尾を得ることができた。切歯の外部形態を目視で確認したが、明らかな形成不全は認められなかった。これらの遺伝子編集F0個体では体細胞モザイクで変異が導入されていると考えられ、機能欠損の表現型に対する効果は限定的であると考えられた。今後、次世代F1や次次世代F2を作出し、全細胞ホモ型変異個体で形質評価する必要がある。
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