研究実績の概要 |
本研究では, 強いヒスタミン生成能を持つM.morganii subsp. morganiiとPhotobacterium damselaeおよびP.phosphoriumを対象とし, これら細菌を溶菌するファージの分離と, その性状を調べた。M.morganiiに感染する溶菌性ファージFSP1株とP.damselaeに感染するファージPhda1株を函館市内の河川水試料から分離に成功し,これらを精製して性状を調べた。 M.morganii 溶菌性ファージFSP1は,平均119.8 nmの頭部と平均117.5 nmの伸縮性尾部を持つMyoviridae科ファージであり,DNAゲノムサイズは45.6-49.4 kbであることが明らかになった。また,ファージFSP1は,50℃・60分間の加熱,pH 5-10・24時間,3 M NaCl・24時間の処理に安定であり,M.morganiiの発育環境で十分な抑制効果を発揮する可能性が示唆された。さらに,ファージの増殖特性を示すファージFSP1の潜伏期,上昇期,バーストサイズが,各々30分,15分,42 phages/infected cellであることも明らかになった。 一方,分離したP.damselae 溶菌性ファージPhda1は,平均62nmの頭部と110nmの尾部を持つMyoviridae科ファージであり,60℃,30分間の加熱,pH 4.0~10.0で24時間処理,および,-20~-80℃で1ヶ月の凍結処理に安定であることを確認した。また,ファージPhda1の吸着率は,pH6.0~5.0で高く,Fe2+,Ca2+,Mg2+の二価カチオン存在下で大きく上昇すること,また,Mg2+,Ca2+存在下でファージPhda1の感染サイクルが活性化され,特に25mM Ca2+添加時に最大となることを見出した。
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