サケ属魚類の母川刷込関連分子を解明するために次世代シーケンサーを用いたトランスクリプトーム解析により,サケ(シロザケ)嗅覚中枢で上方制御の発現を示す遺伝子を探索した。刷込に関わる降海回遊期の幼稚魚,想起に関わる遡上回遊期の成魚の嗅球-終脳を用いた。両回遊期のなかでそれぞれ高い発現を示す配列は,降海回遊期では,シナプス形成や細胞増殖・分化に関わる分子,遡上回遊期には,神経伝達物質の受容体が選抜された。降海回遊期の嗅覚中枢では,シナプス可塑性や神経細胞の増殖が活発化して刷込が行われること,遡上回遊期には,想起に関わる多様な神経伝達物質による情報伝達が盛んに行われ,母川識別している可能性が示された。
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