研究課題
魚類の卵母細胞における油球形成機構については、これまでのサケ科魚類を用いた我々の研究により、油球となる脂質の供給源が血液中の超低密度リポタンパク(Vldl)であることが明らかとなり、さらにVldlは卵母細胞外で代謝され、それによって生じた遊離脂肪酸のみが卵母細胞に取り込まれることが示唆されている。しかし、Vldlを起点とした油球形成機構の詳細は未だ不明な点が多い。そこで本研究は、サケ科魚類(カットスロートトラウト)やヨウジウオ科魚類(ヨウジウオ)、メダカ等を実験魚として使用し、魚類の卵母細胞における油球形成機構について分子レベルで解明することを目的としている。本年度は、ヨウジウオを用いた、油球形成関連因子の発現解析を中心に研究を進めた。前年度に構築したヨウジウオ卵巣のESTライブラリーから、Vldlの代謝酵素である2種リポプロテインリパーゼ(lpl1とlpl2)、脂肪酸受容体候補のcd36とsr-bIを検索し、それぞれのcDNA断片配列を取得した。それらの配列情報を基にcRNAプローブを作製し、in situハイブリダイゼーション法により、卵巣における各mRNAの発現部位を組織学的に解析した。その結果、2種lpl mRNAは卵濾胞細胞、特に顆粒膜細胞に発現しており、これまでのカットスロートトラウトやメダカにおける解析と同様の結果が得られた。また、cd36 mRNAの発現は認められず、sr-bI mRNAの発現のみが卵母細胞内に見られ、ヨウジウオではSr-bIが脂肪酸受容体として機能していることが示唆された。さらに蛍光脂肪酸で標識したVldlをヨウジウオ雌個体に投与して、卵巣内における蛍光脂肪酸の挙動を調べたところ、卵母細胞内の油球に強い蛍光が観察された。これらの結果から、ヨウジウオにおいてもVldlを起点とした卵母細胞内での油球形成機構が存在することが強く示唆された。
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