研究課題
魚類の成長は成長ホルモン(GH)-インシュリン様成長因子(IGF-I)系により主に調節されている。GH組換え魚における代謝産物の動態やエネルギーの生産性に関する知見は少ない。本研究ではGHを過剰発現しているGH組換えスーパーサーモンを用い代謝産物の動態やストレスの影響について検討した。(1)成長ホルモン(GH)遺伝子組換えスーパーサーモンM77系の作出:カナダ水産海洋省のデブリンらにより開発されたオールサーモン発現ベクターOnMTGH1を導入したギンザケ(Oncorhynchus kisutch) M77系をカナダ国立ウエス トバンクーバー研究所内の特殊隔離飼育施設で飼育し本実験に使用した。 (2) 非組換えギンザケ普通魚: スーパーサーモンと比較するため2種類の 非組換えギンザケを用いた。一つはカナダ・ブリティッシュコロンビア州、チヘイリス川産のギンザケ1歳魚、もう一方は宮城県内の養鱒場より購入し東北大学大学院農学研究科内で飼育した1歳魚である。(3)普通魚と組換え魚における代謝産物の違い:スーパーサーモンの特徴を把握するため組換え魚と非組換え魚にハンドリングによる生理学的ストレスを与え、代謝産物についてメタボローム解析を行った。 その結果、組換え魚の筋肉ではストレスの有無に因らず解糖系が亢進しているがことが分かった。また肝臓ではそれら様相が異なっていた。さらにTCA回路においても両種で若干の違いがあった。(4)化学的ストレスがギンザケに及ぼす影響:代表的抗生物質オキシテトラサイクリンをギンザケに投与し生理状態に及ぼす影響を検討ところ、生体内のレドックス状態が変化し酸化的ストレスが惹起されることが判明した。今後はGH組換え魚の他組織における同様の比較やエネルギー生産に関わる因子の発現状況、ストレスの影響などについてさらに検討する必要がある。
2: おおむね順調に進展している
ストレスを与えたGH組換え魚における代謝産物の消長の一部をメタボローム解析により明らかにできた。この結果を基にエネルギー生産に関わる因子の絞り込みがある程度可能になり、次年度の研究の展開が期待できる。
計画に大きな変更はない。前年度得られた結果を基にさらに解析を進める。またエネルギー生産に大きくかかわる細胞内器官ミトコンドリアの機能についても検討し、組織化学的な吟味を行って非組換え魚との違いを理解する。
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