研究課題
27年度は昨年の尿のデータを再解析し、クリガニ尿中に含まれるNAGL濃度を明らかにした。NAGLのクリガニ尿中の濃度は脱皮直前で最大となり、20μMであった、これはブルークラブで計測された最大濃度の約75%であり、同等である。この結果はクリガニとブルークラブが脱皮前に同じようにNAGLの濃度を上昇させていることを明らかにした。この結果はWoods Hole海洋研究所か発行する国際誌 Biological Bulletinに発表した。次に、NAGLがクリガニの血中にどの程度の濃度で含まれるのかを、NMRを用いて調べたところ、全く検出されなかった。このことから、NAGLは血中から選択的に尿中に濃縮されて放出されるか、または膀胱や尿道に開口する分泌腺から分泌されると考えられる。よって、NAGLはいずれにせよ尿中に漏れ出てくるのではなく、積極的に放出されており、NAGLがフェロモンの構成成分であるという仮説を支持する。
2: おおむね順調に進展している
昨年度ブルークラブに加えクリガニの尿中でもNAGLが脱皮前バイオマーカーとして存在していることを確認し、NAGLが甲殻類で普遍的な脱皮前バイオマーカーとして存在する可能性を示した。今年度はこの濃度を明らかにし、主目的を達成した。今年度は、さらにクリガニ血中にはNAGLが存在しないことを明らかにし、NAGLは積極的に尿中に放出されてるいることを示した。
今後も計画に沿って進めていく。イセエビ、ケガニ、オオバウチワエビの脱皮前の尿を採取しNAGLの存在の検証を進めるとともに、ブルークラブ尿中の未同定成熟メス特異的分子の同定を行う。また、各バイオマーカーの産生器官を特定するために触角腺、皮膚組織、脱皮液などの試料を採取しバイオマーカーの定量を行う。最後にバイオマーカーにフェロモン活性があるかどうかを行動試験で検証する。これと並行して、グラファイトカーボンを用いたクリガニ脱皮前メスの尿の分画を行い、その分画のNMRによる分析と行動実験によるフェロモン活性の試験を行う。
在庫のあった試薬等を使用して研究を進めたために次年度使用額が生じた。
次年度使用額を利用して、遠隔地への訪問回数を増やすなどして効率的に研究を進める。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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