研究実績の概要 |
でんぷん分解に関与するアメフラシ消化液に存在する酵素として、2種類の59 kDa, 80 kDa α-アミラーゼ (Amy)、2種類の74 kDa, 86 kDa α-グルコシダーゼ(AGL)を精製し、でんぷん、マルトヘプタオース、グリコーゲン、デキストラン等の基質に対する作用機作について解析し、59kDa, 80kDaアミラーゼの主要プロダクトは、それぞれマルトトリオース、マルトースであり、一方74kDaのα-グルコシダーゼに比べ、80kDaのα-グルコシダーゼは、α-1,6結合を含むアミロペクチンをよく切断することを明らかにした。 さらに、でんぷん分解に関与する4種類の酵素およびセルロース分解に関与する95, 65, 45, 21kDa β-1,4-エンドグルカナーゼ(EG)、210, 110kDa β-グルコシダーゼ(BGL)の内部アミノ酸配列からプライマーを設計し、アメフラシ肝膵臓cDNAよりPCRクローニングを行い、大量発現系構築の準備を進めた。さらに、アラメの消化を促進する25kDaの蛋白質を同定し、その作用機構について解析した。また、アルギン酸ビーズを用いて固定化したBGLの有用性を証明した。以上の成果のうち、アメフラシのでんぷん分解系システムについては、FEBS Open Bio (2014) 560-570に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大量発現系構築のため、分解酵素の内部アミノ酸配列からプライマーを設計し、アメフラシ肝膵臓cDNAを鋳型としたPCR法によってセルロース、でんぷん分解酵素のクローニングを進めた。これまでに45kDa, 21kDa EG, 110kDa BGL, 74kDa AGL, 59kDa Amyは全長cDNAを得た。95, 65kDa EG, 80kDa Amy, 86kDa AGLについては5'-RACEによって完全長cDNAのクローニングを行っており、近いうちに210kDa BGLを除いて、9種類のグリコシダーゼの酵母を用いた発現系の研究を開始できる準備が整った。さらに、アラメに多く含まれるラミナランはBGLによって加水分解され、効率よくグルコースが産生されるが、アラメとBGLを反応してもグルコースは産生されない。そのため、アメフラシ消化液中にBGLによるアラメ分解を促進する蛋白質がないか検索したところ、25kDaのBGL分解促進蛋白質を同定し、この25 kDaの蛋白質のクローニングも開始した。 また、アルギン酸ビーズで固定化することによって、BGLやAGLはセルロースやでんぷんの分解産物からのグルコース産生反応に複数回(10回程度)使用可能で、酵素コストを減らすことができることを示した。
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