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2014 年度 実施状況報告書

海藻バイオマス完全活用を目指した糖化酵素開発

研究課題

研究課題/領域番号 26450284
研究機関徳島大学

研究代表者

辻 明彦  徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (20155360)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードバイオマス
研究実績の概要

でんぷん分解に関与するアメフラシ消化液に存在する酵素として、2種類の59 kDa, 80 kDa α-アミラーゼ (Amy)、2種類の74 kDa, 86 kDa α-グルコシダーゼ(AGL)を精製し、でんぷん、マルトヘプタオース、グリコーゲン、デキストラン等の基質に対する作用機作について解析し、59kDa, 80kDaアミラーゼの主要プロダクトは、それぞれマルトトリオース、マルトースであり、一方74kDaのα-グルコシダーゼに比べ、80kDaのα-グルコシダーゼは、α-1,6結合を含むアミロペクチンをよく切断することを明らかにした。
さらに、でんぷん分解に関与する4種類の酵素およびセルロース分解に関与する95, 65, 45, 21kDa β-1,4-エンドグルカナーゼ(EG)、210, 110kDa β-グルコシダーゼ(BGL)の内部アミノ酸配列からプライマーを設計し、アメフラシ肝膵臓cDNAよりPCRクローニングを行い、大量発現系構築の準備を進めた。さらに、アラメの消化を促進する25kDaの蛋白質を同定し、その作用機構について解析した。また、アルギン酸ビーズを用いて固定化したBGLの有用性を証明した。以上の成果のうち、アメフラシのでんぷん分解系システムについては、FEBS Open Bio (2014) 560-570に発表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

大量発現系構築のため、分解酵素の内部アミノ酸配列からプライマーを設計し、アメフラシ肝膵臓cDNAを鋳型としたPCR法によってセルロース、でんぷん分解酵素のクローニングを進めた。これまでに45kDa, 21kDa EG, 110kDa BGL, 74kDa AGL, 59kDa Amyは全長cDNAを得た。95, 65kDa EG, 80kDa Amy, 86kDa AGLについては5'-RACEによって完全長cDNAのクローニングを行っており、近いうちに210kDa BGLを除いて、9種類のグリコシダーゼの酵母を用いた発現系の研究を開始できる準備が整った。さらに、アラメに多く含まれるラミナランはBGLによって加水分解され、効率よくグルコースが産生されるが、アラメとBGLを反応してもグルコースは産生されない。そのため、アメフラシ消化液中にBGLによるアラメ分解を促進する蛋白質がないか検索したところ、25kDaのBGL分解促進蛋白質を同定し、この25 kDaの蛋白質のクローニングも開始した。
また、アルギン酸ビーズで固定化することによって、BGLやAGLはセルロースやでんぷんの分解産物からのグルコース産生反応に複数回(10回程度)使用可能で、酵素コストを減らすことができることを示した。

今後の研究の推進方策

既にクローニングを終了、または進行中のセルロースとラミナラン分解系、およびでんぷん分解系を構成する消化酵素の酵母による大量発現を構築し、海藻の種類に応じた酵素糖化システムの確立をめざす。特に、資源量が多く、でんぷん含量が高いアオサや、ラミナラン含量が高く、グルコース産生量が海藻に中で最も高いアラメの糖化に至適化した酵素カクテルを作成する。
海藻にはアミラーゼ、AGL, BGL等の消化酵素に対して強力な阻害作用を有する物質が含まれ、海藻の酵素糖化の障害になっている。特に褐藻類のアラメやヒバマタにはBGL阻害物質が含まれ、ラミナランやセルロースの酵素糖化を抑制する。阻害物質を含有しない海藻を大量処理する場合、混入した別の海藻に含まれる阻害物質によって、海藻の酵素糖化が著しく抑制される可能性が高く、商業レベルの海藻の酵素分解を行うには、この阻害物質の問題を解決することが必須である。今回、BGLによる分解を促進する蛋白質として同定された25kDa蛋白質は、アラメに含まれる阻害物質の作用を抑制する。海藻や微細藻類を主食とする動物には、海藻中の消化酵素阻害物質の作用を回避するシステムを有すると考えられ、このような蛋白質を利用することが重要と考えられる。今回、同定した25kDa蛋白質の作用機構の解明と利用について研究を推進する。
褐藻類に含まれるフコイダン等の特殊な構造を有する多糖類の分解系についても、褐藻類を摂食する貝類の消化液を用いて、研究を進める。

次年度使用額が生じた理由

当該年度において、626円で購入可能な物品がなかったため。

次年度使用額の使用計画

次年度予算と合算して、試薬の購入に使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Comprehensive enzymatic analysis of the amylolytic system in the digestive fluid of the sea hare, Aplysia kurodai: Unique properties of two α-amylases and two α-glucosidases.2014

    • 著者名/発表者名
      Tsuji, A., Nishiyama, N, Ohshima, M., Maniwa, S., Kuwamura, S., Shiraishi, M. and Yuasa, K.
    • 雑誌名

      FEBS Open Bio

      巻: 4 ページ: 560-570

    • DOI

      10.1016/j.fob.2014.06.002

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] アメフラシ消化液由来β-グルコシダーゼのラミナランの完全分解2014

    • 著者名/発表者名
      桑村修司,白石将孝,大島美紀,馬庭沙織,湯浅恵造,辻明彦
    • 学会等名
      第66回日本生物工学会大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)
    • 年月日
      2014-09-09 – 2014-09-11
  • [学会発表] アメフラシβ-グルコシダーゼのクローニング2014

    • 著者名/発表者名
      白石将孝,桑村修司,大島美紀,馬庭沙織,湯浅恵造,辻明彦
    • 学会等名
      第66回日本生物工学会大会
    • 発表場所
      札幌コンベンションセンター(北海道札幌市)
    • 年月日
      2014-09-09 – 2014-09-11
  • [学会発表] アメフラシのラミナリン分解システム2014

    • 著者名/発表者名
      桑村修司,白石将孝,大島美紀,馬庭沙織,湯浅恵造,辻明彦
    • 学会等名
      第55回日本生化学会中国・四国支部例会
    • 発表場所
      愛媛大学(愛媛県松山市)
    • 年月日
      2014-06-06 – 2014-06-07
  • [学会発表] アメフラシβ-グルコシダーゼの構造解析2014

    • 著者名/発表者名
      白石将孝,桑村修司,馬庭沙織,大島美妃,湯浅恵造,辻明彦
    • 学会等名
      第55回日本生化学会中国・四国支部例会
    • 発表場所
      愛媛大学(愛媛県松山市)
    • 年月日
      2014-06-06 – 2014-06-07

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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