研究課題/領域番号 |
26450285
|
研究機関 | 広島工業大学 |
研究代表者 |
三浦 智恵美 広島工業大学, 環境学部, 教授 (90518002)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 生殖巣 / 性成熟 / 成長 / 成長ホルモン / 配偶子形成 |
研究実績の概要 |
魚類では、初期成熟と体成長に何らかの相関関係がある種が存在する。本研究では、配偶子形成と体成長の関係を細胞・分子レベルで解析している。これまでのニホンウナギの培養系を用いたエストラジオール17β(E2)暴露実験では、E2により成長因子であるGh、Igf-1、Igf-3の発現が変化する結果を得られている。また、ニホンウナギで雌雄の成長差を調べたところ、雄よりも雌の方が大きくなる事が示されているが、本年度は更に、ティラピアの実験系を用いてE2の作用を解析した。昨年度行なったティラピアの実験系では、生殖細胞をブサルファン処理により化学的に除去することで成長阻害が示されているが、本年度は、3回の外科手術により生殖線を除去したティラピアの体内にE2を投与する事で、E2の体成長への作用を調べた。その結果、まず最初、実験1では、生殖腺除去個体に成長阻害が認められなかった。実験2では、生殖腺除去個体に成長阻害が認められ、ブサルファン処理により生殖細胞を化学的に除去した場合と同様に、成長阻害が認められたが、E2投与によるそれらの成長阻害の回復は認められなかった。実験3では、生殖腺を除去された個体は、成長が阻害され、生殖腺を除去し同時にE2を体内へ投与した場合は、成長が阻害されない結果が得られた。実験1、2で用いた魚は、実験3に比べ個体が小さかった事から、手術をした魚の大きさ及びその魚が持つ生殖線の発達段階によりE2の成長への作用が微妙に異なっていると考えられた。本年度は、結果がばらつき明瞭な結果が得られなかったことから、魚の生殖腺のステージを細かく確認しながら、どの時期にE2の作用が最も顕著に示されるかを明らかにする必要があると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実験では、所属の変更があり、飼育の関係上、ニホンウナギを用いた実験があまり出来なかった。しかしながら、繁殖が容易であり、実験操作を直接行なう事が容易にできるティラピアを用いて、生殖腺除去やE2の体内への投与実験を行う事ができ、結果は実験群間で少しばらついたものの、E2と配偶子形成の関係を解析する事が出来た。さらに生殖腺の発達段階によりE2の作用が異なっているのではないかという示唆が得られた。 更に、アマゴを用い培養系でのE2暴露実験を行ないgh遺伝子の発現を解析したが、その結果は以前ニホンウナギで行なった結果と異なっていた。このことから性ステロイドホルモンの成長や成長関連因子の発現に及ぼす影響は魚種により異なっている可能性も示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、ティラピアと本年度飼育の目処がたったニホンウナギを双方用いて、計画にそって研究を推進する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、所属の変更があり予定していた雌のニホンウナギの飼育が出来ず、十分なサンプルが得られなかったことが主な原因である。
|
次年度使用額の使用計画 |
平成29年度では、飼育環境が整ってきたので、雌のニホンウナギの飼育ができると考えられ、予定通りの計画が遂行できるものと考えられる。
|