研究課題/領域番号 |
26450286
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
杣本 智軌 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40403993)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 腸 / T細胞 / 獲得免疫 / 細胞性免疫 / 粘膜ワクチン / ギンブナ |
研究実績の概要 |
本年度は、経腸管感作法によって生きたウイルス(CHNV)および不活化ウイルスを投与した場合のギンブナのT細胞応答を測定した。不活化ウイルスで感作した場合、生ウイルスで感染させた場合と同様に、腸管において細胞傷害T細胞の関連分子(IFNγ,TCR,T-bet)の発現が上昇し、CD8陽性細胞の割合の増加がみられた。また、不活ウイルスの感作によって、ギンブナ白血球のウイルス感染細胞に対する細胞傷害活性が誘導された。予想に反して、その活性は、生きたウイルスと同等のものであった。これらの結果から、ギンブナでは腸管からの不活化ウイルスの投与によって、細胞傷害性T細胞が中心を担う細胞性免疫が活性化されることが示された。 哺乳類では、外因性抗原である不活化ウイルスでは細胞性免疫を誘導させることができないため、十分な抗ウイルス防御機構を付与することができない。このため、有効なウイルスワクチンを作製するためには、内因性抗原として作用する生ワクチンによる抗原感作によって細胞性免疫を誘導させなけれなならい。しかしながら、本研究で不活化ウイルス投与によって細胞性免疫が活性化されたことから、魚類では局所免疫の活性化によって、不活化ワクチンでも細胞性免疫が誘導されることが示唆された。この事実は、魚類のウイルスワクチンを開発するにあたり、安全性の証明や開発が困難とされる生ワクチンに拘らなくても、局所免疫を活性化させることで有効なウイルスワクチンが開発できる可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた局所感作後の生体内でのT細胞の動向調査については、27年度中に遂行することができなかったが、経腸管感作法によって、T細胞の免疫応答が誘導されることを明かにした。不活化ワクチンによっても細胞傷害T細胞の活性化および細胞性免疫の誘導可能であったという事実は、魚類のウイルスワクチンの開発を考える上で大変興味深く、今後の研究において新展開をもたらした。以上のことから、一部研究の遅れは生じたが、全体としては順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までの本研究で、「腸管」と「鰓」を標的としたウイルス抗原感作によって、T細胞による細胞性免疫応答が誘導されることが分かった。今後は、経腸管および経鰓感作後の局所(腸・鰓)とその他の免疫器官(脾臓・腎臓)におけるT細胞の局在について、凍結切片を作製し、抗ギンブナCD8mAbと抗ギンブナCD4mAbを用いた免疫染色法によって解析する。また、魚類粘液ワクチンの開発のための基礎的知見を得るため、ギンブナに不活化CHNVワクチンの有効性を感染実験によって評価する。
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