前年度までに、外因性抗原である不活化ウイルス(CHNV)で免疫感作した場合でも、魚類では細胞性免疫が誘導されること、その際、腸管がT細胞の活性化において重要な働きを担っていることを明らかにした。本年度は、(1)腸管組織中のどこでT細胞の活性化が起こっているのか、(2)不活化ウイルス感作によって本当に腸管でT細胞が増殖しているのか (3)不活化ウイルスのワクチン効果を検証した。 (1)腸管内におけるT細胞活性化の詳細な場を特定するため凍結切片における免疫染色を試みた。抗ギンブナCD4、CD8モノクローナル抗体の凍結切片における反応性が低いため、特定に至らなかった。(2)腸管でT細胞の増殖が起こるのかを細胞レベルで確かめるため、増殖細胞核抗原(PCNA)抗体を用いた、T細胞マーカーとの2重染色フローサイトメトリーによる解析を行った。現在までのところ、腸管組織で増殖しているT細胞を確認することができたが、不活化ウイルスによってその増殖細胞の割合が増加するのかどうかは明らかにすることができていない。(3)経腸管および腹腔内接種による不活化ウイルスを投与し、感染実験を行い感染防御効果を付与するのかを確かめた。その結果、対照区と比較して両投与法ともに生体内におけるウイルスを増殖を著しく抑制することが分かった。以上のことから不活化ウイルスの投与によって、ウイルスに対する効果的な防御能を付与することができることが明らかとなった。
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