バンドウイルカにおいて,(1)多くの栄養吸収関連遺伝子が腸全体で発現し,脂肪関連因子の発現が特に多く,腸後部で相対的に多く発現する,(2)骨格筋で甲状腺ホルモン(TH)などの作用によりATPの合成と利用,uncoupling proteinの働きを介した熱産生が盛んである可能性がある,(3)寒暖差が大きい園館のイルカで,THの血中濃度が冬季に低下し,ニューロペプチドYの濃度が秋冬に上昇する,(4)イルカ細胞へのTH投与によりATP量が有意に増加する,ことが判明した.以上から,イルカは腸で栄養素を盛んに吸収し,強大な骨格筋でこれを利用して熱を発するが,冬は代謝を下げて脂肪をためると示唆された.
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