研究課題/領域番号 |
26450294
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研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
大平 剛 神奈川大学, 理学部, 准教授 (10361809)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | クルマエビ / 生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン / GnRH / 成熟 |
研究実績の概要 |
クルマエビの脳900個をアセトン:1N HCl(100:3)中でホモジナイズし、ドライアイスで冷却しながら3時間攪拌した。その後、遠心分離により上清と沈殿に分けた。沈殿にアセトン:0.01N HCl(80:20)を加えて攪拌し、遠心分離した。得られた2回分の上清を合わせ、石油エーテルを加えて攪拌して上層を除いた後、下層に再び石油エーテルを加えた。この操作を5回繰り返して残った下層を脳抽出物とした。逆相カートリッジを用いて粗精製した後、精製産物をナノフロー型の逆相HPLCを用いて分画し、40秒毎に溶出産物をサンプルプレートにスポットした。このサンプルを全てMALDI-TOF型質量分析装置で測定し、GnRHと考えられた質量電荷比(m/z)が1369.68のピークをプリカーサーイオンとして選択し、CID法で断片化したフラグメントイオンを測定した。その結果、複数のアミノ酸由来のインモニウムイオンが検出され、それらの中に無脊椎動物のGnRHに特徴的に保存されているトリプトファン由来のインモニウムイオンが含まれていた。次いで、PSD法で断片化したフラグメントイオンを測定した結果、アミノ酸6残基分の情報が得られた(FSEGWF)。このアミノ酸配列と、既知のGnRHで保存されているアミノ酸配列、検出されたインモニウムイオンの情報を組み合わせて推測した結果、クルマエビGnRHのアミノ酸配列はpQRPHFSEGWFP-NH2またはpQPRHFSEGWFP-NH2であると考えられた。このアミノ酸配列から計算した理論値[M+H]+は1369.65であり、プリカーサーイオンの測定値m/z=1369.68とほぼ一致していた。これらの結果より、クルマエビGnRHは脳に存在する11残基からなるペプチドであり、既知GnRHの配列とは異なる新しい構造であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本課題で主要な目的としていたクルマエビGnRHの一次構造を世界に先駆けて決定した。これにより、クルマエビGnRHを化学合成することが可能となり、それを用いて生物活性を測定することが可能となった。これらのことから、本課題は概ね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画通り、化学合成クルマエビGnRHを用いてin vivoの投与実験とin vitroの生物検定を実施する。また、生物活性を高めるために、脊椎動物のGnRHを参考にしてクルマエビGnRHアナログの化学合成を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額は51円のみであり、ほぼ予定どおり支出できた。
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次年度使用額の使用計画 |
繰越額は51円であることから、当初予定していた使用計画通り支出する。
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