研究課題/領域番号 |
26450295
|
研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
廣井 準也 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 准教授 (20350598)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 塩類細胞 / Rh因子 / Na+/H+交換体 / 超解像イメージング |
研究実績の概要 |
ニジマスの鰓について,水素イオンとアンモニアの排出に関係すると予想されるトランスポーター群の局在を,超解像イメージングによって明らかにすることを試みた.水素イオンの排出は体液の酸塩基調節のかなめであり,アンモニアの排出は窒素代謝の最終過程であるため,これらのメカニズムを機能組織学的に明らかにすることは魚類生理学・水産増養殖学の両面から重要である.これまで,ニジマスにおいて,水素イオンとアンモニアの輸送に関与していると予測されるRh因子(Rhcg1,Rhcg2,Rhbg)とNa+/H+交換体(NHE3b)に対する特異抗体の作成に成功し,それぞれのトランスポーターの局在を同時多重免疫蛍光染色によって単一細胞レベルで可視化することに成功している. 本年度は特に,高感度の検出器を備えた共焦点レーザー顕微鏡とデコンボリューションソフトウェアを組み合わせることにより,これらのトランスポーター群の超解像イメージングを試みた.共焦点レーザー顕微鏡のピンホール径を通常の1 Airy Unit (AU)から0.5-0.6 AUまで絞り,高感度のGaAsP検出器を用いて画像を取得し,さらに数学的処理(最尤法によるデコンボリューション)を施すことによって,超解像イメージングが可能となった.上記のトランスポーター群の中でも,特にRhcg1とNHE3bの局在パターンが低Na+環境と高H+環境で変化する様子を明瞭に捉えることが可能となった.さらに,塩類細胞の大きな特徴である豊富なミトコンドリアと管状構造について,これまで光学顕微鏡レベルでは観察困難であったが,上記の技術をもちいて微細構造の可視化と定量化に取り組んでいる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の輸送体タンパクによる機能的複合体(メタボロン)を解析するためには,従来の共焦点レーザー顕微鏡を超える高解像度の顕微鏡画像取得・処理システムが必要となる.本来なら,昨年度に所属研究機関の共通機器室に最新の超解像レーザー顕微鏡(Zeiss LSM 800 with Airyscan)が導入される予定であったが,導入が叶わなかった.しかし,代替策として従来型共焦点レーザー顕微鏡とデコンボリューションソフトウェアの組み合わせによる超解像イメージング技術を確立することに成功した.具体的な成果として,Rhcg1とNHE3bの共局在の微細スケール(200ナノメートル以下)での変化を解析することが可能となった.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度に確立しその効果を確認できた超解像イメージング技術をさらに有効活用し,ニジマス鰓の塩類細胞における重要トランスポーター群の局在様式をリマッピングすることを目指す. 具体的な解析項目として,本年度解析したNHE3bとRhcg1に加え,さらに,Rhcg2, Rhbg, NBC1, NKCC1a, NCC2についても,局在様式を微細スケールで明らかにする.さらに,塩類細胞の大きな特徴である豊富なミトコンドリアと管状構造についても,超解像イメージング技術によってこれまで困難であった微細構造の可視化を目指す.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は超解像イメージング技術の確立に集中したため,当初予定していたCa2+チャネル,Na+/HCO3-共輸送体,Cl-チャネル特異抗体に対する抗体の作成とNa+/Cl-共輸送体の遺伝子クローニングを来年度に行うことにした.そのため,抗体の作成費用約20万円とクローニング費用約15万円が不必要となった.
|
次年度使用額の使用計画 |
前年度行わなかった,Ca2+チャネル,Na+/HCO3-共輸送体,Cl-チャネル特異抗体に対する抗体の作成に約20万円を予定する. 前年度行わなかったNa+/Cl-共輸送体の遺伝子クローニングに約15万円を予定する.
|