研究実績の概要 |
平成27年12月から30kL閉鎖循環式水槽で水温と日長を制御して産卵を誘起・継続させたマダイ(5歳)を用いて、28年3月に2回および5月に1回実施した合計3回の培養実験により得られた卵濾胞サンプルのトランスクリプトームを実施した。 午前9時前後にマダイ1尾から卵濾胞を取り出し、組換えマダイ黄体形成ホルモン(rLH, 10μg/ml)またはヒト胎盤性性腺刺激ホルモン(hCG, 10 IU/ml)または卵成熟誘起ステロイド(DHP, 10ng/ml)の存在下ないし非存在下(対照区)の4実験区を設定し、L-15培地を用いて20℃で24時間培養した。 その結果、実験に用いた卵巣中に成熟卵(透明卵)を持つ個体を用いた3月の1回の実験において、DHP区のみで培養開始から18時間後に生体外卵成熟が観察された。そこで、卵成熟した卵濾胞(卵成熟能あり、competent)としなかった卵濾胞(卵成熟能なし、incompetent)の違いを明らかにするため、卵濾胞サンプルからRNAを抽出、逆転写した後、NGS (Illumina HiSeq4000)により塩基配列を決定しトランスクリプトーム解析を実施した。また、ホルモン(rLHおよびhCG)が遺伝子発現に及ぼす影響を解析した。ステロイドホルモン合成に関する遺伝子に着目すると、competentではincompetentに比べ、steroid 21-hydroxylase (CYP21A) の発現が上昇、エストラジオールの代謝に関与する酵素の発現が低下していた。incompetentにホルモン (hCG, rLH)を処理すると、17alpha-hydroxylase (CYP17A)の上昇がみられた。 以上により、昨年度に引き続き、マダイ卵成熟過程の遺伝子的背景の一端が解明された。
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