研究課題/領域番号 |
26450309
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
伊藤 亮司 新潟大学, 自然科学系, 助教 (70334654)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | TPP大筋合意 / コメ輸出入 / 現地生産 / 競合国との市場競争 |
研究実績の概要 |
昨年度は、ついにTPPが大筋合意に至ったため、その内容およびそのコメ産業への影響についての情報収集に最大限の力をつぎ込んだ。前年度にはTPP交渉が停滞するなか、加速するTPP協定国以外の国についての実態調査およびそのための人的ネットワーク形成に努めたのでそれを活かして中国およびタイにおける本格的な日本のコメ産業のグローバル対応およびその際の現地市場の動向・競合する現地国内および他国の展開状況についての把握に努めた。特に中国における清酒の現地生産化の動きについて当該企業の生産展開に随行してリアルタイムでの企業行動についての実態調査を行ったことが最大の成果である。タイについては、農業機械メーカーによる農機販売促進策としての米輸出および現地生産についての企業戦略の具体像を把握した。これについては最終年の今年度も継続的に調査・研究成果の発表を行う予定である。また、改めて気づかされたのが、コメ産業のグローバル対応はそこのみを見つめることも大事だが、その動きはあくまで、日本国内におけるコメ生産者や生産者団体の国内市場対応あるいは加工産業の国内展開とセットになっており、いわば国内市場における優位性・経営余力を使っての「先行投資型」海外展開が基本だった段階から、その「余力」が縮小する中での戦略再構築・また競合他社等との調整が必要な局面にあることである。このことから「国内調査」を同時並行的に進めることの重要性も明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TPP交渉自体が遅れてきたこともあり、当初のようには国際化の進展が進まず、変則的な動きも絡んでいたため、1年目は一定の軌道修正も必要になった。昨年度は、その後の調査対象の再吟味に合わせて国内外の情報収集に務めたためこれについては順調に行うことができた。調査対象との良好な関係が維持されているので、それらの展開に合わせて実態調査を引き続き行うことができそうである。TPPの大筋合意を受けて、それなりに各調査対象の動きが始まっており、基礎的な情報収集は一定の成果を得たので、それを踏まえた証拠集めを進め得る段階にある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終とりまとめに向けて、一気に現地調査の完成および成果報告を行う予定。5月には中国黒竜江省における現地米生産の日本勢との競合状況および現地米販売における糧食糧油店などにおけるセット販売の実態、日本食の普及下における米・米製品の調達構造に関する実態調査を予定している。同時に、各国の競合製品の主戦場である台湾および香港、韓国における市場調査を加えて、年度中には成果を取りまとめたい。ただし、TPP交渉が一歩前進した今、ちょうど状況的には「やっと面白くなってきた」局面でもあるので、(幸いなことに少し使い残した予算)場合によっては、1年研究延長を申請して今後の状況を見守る方が良いかもしれない。もちろん、そのような状況だからこそ年度内に本研究はキチンと終えて、必要なら改めて新たな研究枠組み構築を図ることの方が積極的であると考えている。これらについては年度後半に状況を見ながら最終判断したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
TPP大筋合意に合わせて、その合意内容やコメ産業への影響、関連企業の市場行動について調査したが、調査先のメインが当初の予想よりも国内における情報収集を優先せねばならなかったため結果的に旅費が少なくて済んだこともあり、一定金額を使い残すことになった。また、同様の理由で、当初、海外調査における通訳や翻訳などに謝金を充てる予定だったところが、国内での情報収集がより重要になる中で、結果として少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
国内における情報収集を引き続き行いながら、取りまとめに向けて、海外市場・海外生産動向についての証拠固め・データ収集を充実化させることで、次年度使用額として計上した金額を使用する予定。最初の計画では予算制約により諦めていた実態調査が可能になれば、研究が大きく進展する見込み。
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