研究課題/領域番号 |
26450310
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
酒井 富夫 富山大学, 極東地域研究センター, 教授 (20225767)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 家族農業経営 / 農業構造政策 / 国際研究者交流 / 中国 / 韓国 / EU |
研究実績の概要 |
平成26年度は、下記の調査研究を行った。 1.家族農業経営の理論として、EUで展開している「家族の個人化=多様就業論」に注目し、日本の実態を念頭に置きつつ、従来の小農論、家族農業経営論との接合を試みつつある。また、経営展開の政策環境として、直接支払制度の変化が重要であるが、EUのオランダとドイツの動向を分析する研究会を開催し、EUの2013年CAP(共通農業政策)改革が、よりいっそう市場化を強化すると同時に、環境・農村開発の側面をさらに前面に出す方向にあることを確認した。これにより、北東アジアの直接支払制度との同質性と異質性を把握する基準を得ることができたという意義がある。 2.国内調査では、北海道、富山県、滋賀県、山梨県、静岡県、長野県、群馬県、鳥取県に訪問し、地方自治体の農業構造施策の特徴を聞き取りした。その結果、国の政策と地方の実態のギャップを調整しながら、施策化している姿を把握しえた。家族農業経営にとっては、国の政策とともに、地方行政による施策のあり方が重要な内容をもつ。また、富山県内の稲作農家や北海道の酪農家を対象に、家族農業経営の変容の実態を把握しつつある。 3.外国調査では、(1)中国農業大学にて、本調査(平成27年度計画)において、近年急増している農地株式合作社(上海周辺)と家族農業経営との関係性を把握するため、中国での農業専業合作社の現状等について事前調査を実施し本調査を設定した。(2)EU(ドイツ)での本調査(平成27年度計画)で把握する「多様就業に基づく新しい農業経営」について、事前調査にてその概況把握と本調査設定を行った。本調査では、中国での機械作業受託組織(河南省)やドイツでのマシーネンリング(機械化銀行)をも調査するが、日本の機械共同利用組織やコントラクターと同じく、これらは家族農業経営存続のためのサポート組織として重要な役割を持っていることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内外の共同研究者との連携もスムーズにいっており、現地調査の順序変更があるが、調査自体は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
1.家族農業経営の理論的整理については、2015年夏までには一応の取りまとめを行い、第12回北東アジア農業農村発展国際シンポジウム(東京農業大学、8月予定)にて発表し、海外共同研究者等との共通認識を深める。 2.国内調査では、地方農政の調査の対象自治体を拡大し、各自治体の農業構造政策の比較分析を行う。また、富山県内や長野県内等の家族農業経営を対象に現地調査を進め、多様就業化の観点から「変容」の実態把握を試みる。 3.外国調査では、中国(河南省、上海周辺、6月予定)、及び、EU・ドイツ(バイエルン州、8月予定)の本調査を実施する。当初研究計画では、平成26・27年に韓国調査を実施する計画であったが、調査設定環境等を考慮し中国調査を先行させた。韓国調査については平成27・28年に実施する予定である。これらの国内調査、外国調査の結果は、平成28年度北東アジア農業農村発展国際シンポジウム(中国にて開催を計画)にて発表し合い比較分析する。また、科研報告書等として取りまとめる。
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