農作業の受委託を仲介するドイツのマシーネンリングが、取り扱う事業を多様化させてきている過程を調査し以下のことが明らかとなった。①農作業受委託は需要が増加しており、家族経営主体のドイツにおいては農作業の外部依存度が高まっている。②しかしながら、他の領域での事業が拡大しており、農作業受委託が事業取扱高に占める割合は横ばいないし低下傾向である。③農業ヘルパーおよび家事ヘルパーは依然として事業の柱となっており、家族経営のセーフティネットとして機能しているが、非農家へのサービス提供が増えている。④こうしたヘルパー事業は農業・林業・園芸保険機構に集約され、その仕組みのなかでのマシーネンリングが位置付けられている。⑤農業・農村の多面的機能が重要視されるようになり景観保全や冬期間の除雪などの非農業生産分野の業務が拡大している。⑥農業生産分野では、農作業ピーク時に人材を地域外から季節労働者を調達し派遣する事業(人材派遣業)が伸びている。⑦人材派遣は、農業分野に限らず地域の他産業への派遣を行うようになっており、その需要が増加している。⑧サービスの多様化、広領域化に対応して、損害保険等様々な局面で有効な保険を提供する取り組みが子会社によって行われている。バーデン-ビュルテンベルク州を対象に事業取扱高の内訳をみると、農作業受委託32%、農業・家事ヘルパー19%、景観保全・地域保全事業30%、季節労働者派遣9%、農外への人材派遣8%、であり非農業生産分野の割合が大きくなっている。 また、農業生産分野での新たな動きとして、農業機械のリースが確認された。マシーネンリングが機械を調達して機械ステーションに置き、それを会員農家と農作業請負業者が借用して受託作業も行っていることが確認された。これは労働と資本を分離する機械銀行としての新たな形態とみることができた。
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