研究課題/領域番号 |
26450313
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研究機関 | 広島修道大学 |
研究代表者 |
矢野 泉 広島修道大学, 商学部, 教授 (90289265)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中央卸売市場 / 卸売業者 / 経済復興 / 民間流通 / 生鮮食料品 / 広島 |
研究実績の概要 |
広島市の戦後経済の復興過程における生鮮食料品流通に関わる公的システムと民間システムの役割について、平成27年度は、主に昭和初期の新聞記事から資料収集を行うとともに、当時の周辺地域の農業生産構造の変化について統計及び文献研究を行った。また、比較対象として、災害時及び災害復興時の経済的インフラが混乱する中で食料流通業者が果たした機能について、東日本大震災の被災地の卸売市場や、わが国で最も古い京都市中央卸売市場の歴史的盛衰についても調査や資料収集を行った。 その結果、2つの仮説を構築した。第1は、戦中及び終戦直後の統制経済時においては民間流通業者が公的な機能(流通過程を通じた市民への公益性の発揮)を果たしているのではないかという仮説である。この仮説については次年度内にさらに検証していく予定である。また第2は、終戦後経済復興の過程において、大きく成長する民間流通業者が登場し、それが中央卸売市場が設立された際に中心的な卸売業者として入場している(又は、その業者を中心に業者統合をしている)ケースが多くの中央卸売市場でみられたことから、現代の中央卸売市場は公的な位置づけにあるが商取引部分は民間的な慣習や経営理念に基づいているという仮説である。すなわち、中央卸売市場の公的な性格は商取引部分に及んでおらず、流通機能的には大きな意味をもっていないのではないかという課題である。これについての検証は、現在卸売市場研究において議論されている卸売市場の公益性に一石を投じることができる可能性があるため、引き続き来年度において精緻化していきたいと考える。 これら成果の一部は、中央卸売市場の仲卸業者団体である全青卸連関西地区協議会において、公的市場の性格と民間流通業者の機能の歴史的な意義と今日的な位置づけについての講演の中で発表した。また、平成28年5月〆切の学内紀要への投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度は所属大学を移動したことにともない、新任地において新しい授業や学内委員の仕事に対し予想以上に時間を割かなければならなかったことや、前任校との出張手続きの違いにより思ったように調査に出ることができず、計画していた調査を後延ばしにしたり延期・中止せざるを得ないことがあった。また、新任地大学における年間の仕事配分が年初にわからなかったため、学会等にも思うように出席できなかった。そのため、一昨年度から準備していた研究の発表機会を作ることができなかった。上記より、計画よりやや遅れていると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度であるため、これまでに収集した資料の整理と、学会や論文投稿等の成果発表を計画的に行い、それに向けての補足的な調査や資料収集を行う。 研究開始当初は見えていなかった生鮮食料品流通における民間流通業者の公益性について、統制経済期、戦後経済復興(成長)期、現代の各期別再整理を中心に卸売市場研究としてまとめるとともに、戦後70年を経過した広島市の歴史研究的な整理も行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
勤務大学の変更により、担当授業数の増加、出張手続きの違い、その他新しい環境への適応のため、予想以上に時間や労力を費やすこととなったため、学会参加や学会誌への投稿を予定通り実施することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度繰り越し分は、初年度からの研究成果の学会誌への投稿に充当したいと考えている。この作業をできるだけ早く進め、次年度内に受理・発表できるよう努力する。
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