研究課題/領域番号 |
26450314
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
武藤 幸雄 香川大学, 農学部, 講師 (90596123)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ソーシャルキャピタル / 信頼 / 農地集積 / JAのガバナンス |
研究実績の概要 |
2014年度には,ソーシャルキャピタルや信頼形成が社会経済活動に与える効果を分析した研究事例について広くサーベイを行った.また,日本の農業経営やJAの運営においてソーシャルキャピタルや信頼がどのような役割を持ち得るのかを論じた文献について広くサーベイを行った.これらのサーベイにより,農業経営研究における信頼やソーシャルキャピタルの役割,位置づけを確認することが可能になった. このほか,2014年度には香川県坂出市松山地区において木下農園がJAや周辺の農業者と信頼,協力関係をいかに築いて農業経営を発展させているかを明らかにするための実地調査を行った.さらに,木下農園の経営戦略を参考にして順調な経営規模拡大を遂げつつある荒川農園(高松市三谷町)を訪問調査した.これらの調査より,木下農園と荒川農園の経営発展ではJAや周辺農業者との信頼・協力関係がいかに重要な役割を果たしているかについて確認することが可能になった. 以上の文献サーベイと実地調査の結果を参考にして,農業経営の発展においてJAや周辺農業者との信頼・協力関係が果たす役割を明らかにするためのアンケート調査票を作成した.また,農業者がJAや生産部会との協力関係を形成することによって,地域の農業が発展を遂げられるかどうかを示すための経済理論モデルを作成した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度には木下農園と荒川農園の経営実態について実地調査をおこなうことによって,ソーシャルキャピタルと信頼が先進的な農業経営において果たす役割について仮説を構築することが可能になった.この仮説をもとにして,ソーシャルキャピタルや信頼が農業経営,JA運営において果たす役割を示す経済理論モデルの作成に着手できるようになった.当初の研究計画では,この経済理論モデルの作成に着手するのは2015年度後半以降になると見込んでいたが,それよりも早く着手できたことになる. 2014年度には,上記の仮説を立証するためのアンケート調査の調査票の作成がほぼ完了したが,そのアンケート調査の実施は2015年度にずれこむことになった.当初の研究計画ではこのアンケート調査実施は2014年度になると見込んでいたが,それよりも遅れることになった.しかし,この遅れは研究計画全体の遂行にとって大きな支障をきたすものとは考えられない.本研究計画では,経済理論モデルに基づく理論的研究とアンケート調査結果に基づく実証研究の双方をおこなう予定である.理論モデルの研究が先行して進んでいるため,2015年度後半から2016年度にかけては理論モデルの研究に充てる時間は当初の計画よりも大きく減らすことができると見込まれる.こうして空く時間を活用して,アンケート調査に基づく実証研究にエフォートを大きく投入することができる.
|
今後の研究の推進方策 |
2015年度には,JAや生産部会の活動に対する農業経営者の信頼形成が経営発展に与える影響について説明するための理論研究を進め,農業経営学会大会,地域農林経済学会大会で研究報告を行う.また,研究報告の結果をもとにして分析に修正を加えて,その分析結果を学会誌に論文として投稿する. このほか,2015年度には,ソーシャルキャピタルと信頼が先進的な農業経営において果たす役割について確認するためのアンケート調査を実施し,その集計作業を進める.集計分析結果のうち概要に相当する部分を,日本農業経済学会大会で研究報告を行う. 2016年度には,上記の上記のアンケート調査結果について仮説に基づく計量経済学的分析を進め,農業経営学会で研究報告を行う.また,その研究結果を論文にまとめて学会誌に投稿する.このほか,アンケート調査の結果をもとにして,前年度に作成した理論モデルの修正点や改良点を探り,新たな理論モデルの構築を試みる.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,2014年度にソーシャルキャピタルと信頼が農業経営発展において果たす役割を確認するためのアンケート調査を実施し,その費用として130万円程度を見込んでいたが,2014年度中にこのアンケート調査を遂行することができなかったため,次年度に繰り越すことになった.
|
次年度使用額の使用計画 |
2015年度の前半に,ソーシャルキャピタルと信頼が農業経営発展において果たす役割を確認するためのアンケート調査を実施し,その費用として130万円程度を計上する見込みである.内訳としては,調査協力謝金,調査票印刷作成,調査票の郵送,調査票のEXCEL入力集計のための人件費などである.このほか2015年度には,理論モデルの研究遂行のために,専門書購入,学会大会での報告,情報交換などが必要になり,これらに関して30万円程度を計上する予定である.
|