研究課題/領域番号 |
26450316
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
品川 優 佐賀大学, 経済学部, 教授 (10363417)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 韓国農業 / FTA(自由貿易協定) / FTA農業対策 / 米関税化 / 米産業発展対策 |
研究実績の概要 |
当初WTO体制を中心とした多国間交渉にもとづく自由貿易の推進を方針としていた韓国政府は,2000年代に入ると二国間交渉によるFTAの推進に方向転換した。最初のFTA締結国であるチリを皮切りに,経済大国かつ農産物輸出大国でもあるアメリカやEUとのFTAにも踏み切った。その後もオーストラリアや中国といった農産物輸出国とのFTAを締結する一方で,国内農業への影響緩和策としてFTA農業対策を打ち出した。その主な内容がFTA被害補填直接支払いと廃業支援金であった。 さらに2015年1月には,WTOの関税化猶予期間が終了する米も関税化に踏み切るとともに,米関税化対策として米産業発展対策を打ち出した。米産業発展対策は1)農家所得の安定強化,2)米産業の体質改善,3)米の消費・輸出の拡大・促進,の3つを柱とするものである。1)では,①米所得等補填直接支払いの固定支払いの引き上げ,②畑農業直接支払制度の改編,③水田二毛作の拡大・推進,④零細及び高齢農家のセーフティーネットの拡大(経営移譲直接支払い及び農地年金の要件緩和),⑤有機栽培による輸入米との差別化,を掲げている。 2)は,主に規模拡大による競争力強化を指し,経営規模6ha以上の米専業農家3万戸に米生産面積の40%を集積すること,トゥルニョク経営体といわれる50ha以上の集団化した範域の水田を共同生産・管理する経営体を育成すること,である。 3)では,減少している1人当たり米の消費量(2013年67.2kg)を57kgで維持するために,米の消費拡大に向けた広報活動や米の自助金制度の導入などを講じることで,米消費量の減少を鈍化させるとともに,レトルトご飯など米の加工産業の育成や輸出の拡大等新たな販路の開拓に力を入れるとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国策研究機関である韓国農村経済研究院での韓国農政・農業の実態・展望塔についてのヒアリング調査や資料収集をおこなうとともに,関係機関である韓国農漁村公社や全羅北道群山市での農家及び法人調査をおこなうことで一定の成果を得られたことが,「おおむね順調に進展している」と評価した根拠である。
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今後の研究の推進方策 |
近年締結及び発効したオーストラリアや中国の締結・発効内容の確認と,それが国内農業にどのような影響を及ぼすのかの検証,FTA被害補填直接支払いの発動実態,米の関税化対応の検証・考察をおこなう。
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次年度使用額が生じた理由 |
数回の訪韓については,他の科研を用いたため,当初予定よりも残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
中間年であり,初年よりも問題意識等が深まったこともあり,初年よりも訪韓による調査回数が増えるものと予想され,それに充当する。
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