研究課題/領域番号 |
26450318
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研究機関 | 酪農学園大学 |
研究代表者 |
發地 喜久治 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (40244842)
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研究分担者 |
尾碕 亨 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (70275486)
樋元 淳一 酪農学園大学, 農食環境学群, 教授 (00199019)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ハラル食品 / ローカルハラル / 認証システム |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、主として日本と中国のハラル食品の認証システムとハラル食品産業の実態を把握することに努め、次の実績を得た。 (1)日本における調査研究 ハラル食品の製造過程には、ムスリムが係わる必要があるが、イスラム教徒が極めて少ない日本の事情に考慮した「ローカルハラル」の有効性が注目され、一定の広がりを見せている。そのため、今年度においてもマレーシアハラルコーポレーションの関係者から情報を得た。また、NPO法人日本アジアハラール協会におけるハラル認証への考え方について調査した。これらの調査を通じて、訪日客を受け入れるための対応だけでなく、中東や南アジアのイスラム圏にハラル食品を輸出する試みも増えつつあるころも把握した。さらに、東京におけるムスリムの宗教活動を理解するために、東京で最大の規模があると一般的に目されているトルコ系のモスク「東京ジャーミー」を訪問し、活動状況に関する情報を収集した。 (2)中国における調査研究 内モンゴルの草原地帯(スニタサキ)で主として羊肉のハラル(清真)食品を製造販売しているマンドラ肉食品有限会社を訪問し、営業内容と今後の方針等について聴き取りした。また、酪農を中心とする牧民の組合として最近結成されたスニタサキ畜牧業専業合作社連合社を訪問し、羊肉の加工、畜牧生産者の組合活動などについて情報を得た。砂漠地帯のバサノルチンにあるラクダ牧場牧場を訪問し、運営の経緯と乳、肉の生産・販売状況についてヒヤリングした。この一連の調査によって、中国のハラル食品の製造過程の一端を把握することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27 年度は、中国のハラル認証機関と認証を受けた事業者の事例収集と分析を行なう計画であった。特に、新疆及び寧夏においてウイグル族及び回族から、ハラル認証の現状と今後のあり方に関する意向を面談形式で聴き取り調査することも想定していた。昨年度末までに、中国のハラル(清真)認証を受けた食品メーカーと畜牧生産者への調査は実施できたが、内モンゴルの回族関係者に限定されていた。新疆のウイグル族関係者への調査が平成28年度の課題として残されることになった。さらに、韓国、台湾を対象とする調査も残されている。 以上のことから、進捗状況は「やや遅れている」状況と判断した。 一方、日本のハラル食品認証機関への調査は進んでいるが、日本の食品メーカーと観光業界への調査が未了であり、最終年度の課題として残されている。これについては、第一に訪日客の受け入れを目的とした観光業と「ローカルハラル」認証システムの有効性、第二に日本の食品をイスラム圏に輸出することを目的とした食品産業と厳密なハラル認証システムの適用可能性、以上二つの論点を軸に検証していく計画である。 また、日本国内では、イスラム教徒の定住者及び旅行者への日本のハラル事情に関する意向を把握するためアンケート調査を計画している。アンケートはローカルハラル認証施設利用者、留学等による日本定住者などを対象に実施するが、関係機関・団体からの調査協力がスムースに得られるよう信頼関係の構築に特に配慮して進めることにしている。さらに、日本の認証機関等の団体に対しても、前年度の補足調査を実施する。
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今後の研究の推進方策 |
先ず、次の日本での認証機関、JAKIM 公認の2 団体、JAKIM とは関係のない国内独自の機関として認証を行なっている仙台イスラム文化センター(ICCS)などを対象とした補足調査を行なう。また、それぞれの団体からハラル認証を得た事業者の訪問調査も実施する。さらに、「ローカルハラル」は主として観光業での有用性があると考えられるので、その点を中心に検証する。この認証システムは、マレーシアのハラル認証基準をベースに、日本の現状に合わせてローカライズされたもので、日本においてのみ通用するハラルである。この会社(マレーシアハラルコーポレーション)は、マレーシア政府機関のハラル産業開発公社(HDC)から付与されたハラル管理資格を持つマレーシア出身者が東京都内で設立し、これまでに、イスラム教対応ホテル、ハラルメニューレストランなどの認証実績がある。 中国の認証機関については、新疆ウイグル自治区の訪問調査を実施するとともに、韓国、台湾の認証機関の活動状況を調査する。 以上を通じて、ハラル認定における“東アジア共通基準(仮称)”の策定による相互協力の可能性を検証する。その検証作業に入るためには、日本と中国の事例調査結果の分析、日本定住イスラム教徒と日本への旅行者及びイスラム教徒の中国少数民族(回族、ウイグル族)などの意向調査結果の分析を総合的に行なう必要がある。同時に、韓国、台湾のハラル認証機関と認証を受けた事業者の調査・分析を行う計画であり、最終年に多くの課題を残しているため、年間のスケジュールに無理が出ないように合理的に企画・実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は日本と中国の調査経費(旅費、人件費・謝金)として支出し、韓国、台湾の調査は実施していないため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は中国新疆に加えて、韓国、台湾を対象とする調査を実施する計画であり、それに対する調査経費として使用することとしている。
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