研究課題/領域番号 |
26450319
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研究機関 | 共栄大学 |
研究代表者 |
中村 哲也 共栄大学, 国際経営学部, 准教授 (80364876)
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研究分担者 |
矢野 佑樹 共栄大学, 国際経営学部, 講師 (40618485)
丸山 敦史 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (90292672)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 放射性物質 / 食品 / フランス / スウェーデン / チェルノブイリ / 原子力発電所 / 安全対策 / ロジットモデル |
研究実績の概要 |
今年度は,平成26年度の実施計画に基づいて,フランス市民が評価する電力政策と放射性物質汚染対策について検討した。福島やチェルノブイリの原発事故については,ほぼ全員が記憶しており,この事故によって放射性物質が飛散したことを6割の者が記憶していた。また,チェルノブイリ事故の際の旧ソ連及びフランス政府の情報公開については,両国が市民に正しい情報を公開しなかったため,それぞれ7割,5割の人々が信頼していなかった。チェルノブイリ事故の際,フランスでも放射性物質の被害にあった国民がいたことを5割の人々が知っていた。そして,原発事故の際,汚染された記憶がある者や,食品を購入する機会の多い女性は,食品内の放射性物質の安全性を確認していた。更に,フランスにも輸出されている日本の緑茶がEU規制値を満たしていても4割の人々が購入しなかった。ただし,規制値のレベルを下げ,市民に正しい情報を与えた場合は,購入する可能性が向上した。福島の事故によって,エネルギー政策は,フランス市民の9割は変わっていないと感じていた。また,フランスでも,今後は脱原発を推進したい人も3割弱いるが,電力のコスト負担が増えるならば,再生可能エネルギーと通常電力と併用して使うと答えた。そして,福島の事故の記憶が薄い者や,福島の事故の際の事故対応が迅速だったと感じた者は通常電力を推進するが,福島の事故の記憶が鮮明な者や原発を推進しない者は再生可能エネルギーを推進した。 また,スウェーデンにおける食品内の放射性物質安全対策については,スウェーデン農業大学の研究者と調査票を検討し,研究を進めている。検討した結果,原発推進者と脱原発推進者の意見によって,回答がどのように変わるのか,再検討するため,今年度の夏に改めて調査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度は,フランス・ロレーヌ地域圏を事例として,フランス市民が評価する電力及び放射性物質汚染対策について検討した。本論文は、2014年11月に日本国際地域開発学会春季大会(九州大学)にて報告している。また,本研究以外にも,スウェーデンにおける食品内の放射性物質安全対策に関するアンケート調査をスウェーデン・ウプサラで実施するはずであったが,調査票を検討し,打ち合わせた結果,調査は今年度の夏に実施することになった。スウェーデンに関する調査は若干遅れているが,2015年3月には東日本大震災後の栃木産とちおとめの販売戦略を事例とした,ポジショニング戦略と購買選択行動に関する調査報告を出版した(溝辺哲男・朽木昭文編著『農・食・観光クラスターの展開』農林統計協会参照)。 また,投稿中ではあるが,香港向けのコメや和牛の輸出を事例として,香港市民が日本産農産物をどのように評価しているのか、購買選択行動を考察し、検討した。さらに、現在は台湾人が青森産リンゴをどのように評価しているのか、また彼らの購買選択行動に放射性物質の影響はあるのかどうかを調査中である。本研究の研究計画以上に研究が遂行されていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の研究の推進方策としては,①スウェーデンにおける食品内の放射性物質安全対策を継続し,②アメリカにおける原子力関連施設及び放射性物質汚染対策を新規課題とする。当初の計画では,ウクライナにおける食の安全対策について,調査し,考察するはずであった。しかしながら,2014年以降のクリミア・東部紛争により、国内は政情不安定になっている。平成27年度に調査を実施したかったが、外務省より渡航延期が勧告されているため、今年度は平成28年度のアメリカ調査を前倒しして、実施したい。 調査の具体的な実施方法であるが、スウェーデンとアメリカ、両国での調査とも、オンラインアンケートツールの1つであるSurveyMonkeyを使用し、日本から調査票をアップロードしたうえで、PCやタブレットによって、オンラインで記入してもらう方法を取りたい。アメリカでの調査は平成26年度にペンシルバニア州立大学の協力を得て、8月中に集計する。調査票についてはすでにアップロード済みである。スウェーデンにおける食品内の放射性物質安全対策については、フランスで調査した際と同様に、オンラインで調査票を記入してもらいつつ、現地スタッフを雇用し、調査を実施したい。
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