研究課題/領域番号 |
26450321
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
西澤 栄一郎 法政大学, 経済学部, 教授 (30328900)
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研究分担者 |
田中 勝也 滋賀大学, 環境総合研究センター, 准教授 (20397938)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 環境保全型農業直接支援対策 / 生物多様性 / 農村振興 / 滋賀県 |
研究実績の概要 |
本研究は、日本の農業環境・資源政策の評価手法を開発し、実際の施策の評価を試みることを課題とする。評価の対象は、現行の国の政策である環境保全型農業直接支援対策と多面的機能支払交付金とする。前者は農業環境政策のひとつとして、後者は農村振興政策の一例として位置づける。 環境保全型農業直接支援対策は、化学肥料と農薬を慣行栽培の半分以下に減らすことに加え、地球温暖化対策または生物多様性保全に貢献する取り組みを行う農業者に対して交付金を支給するという制度である。本研究では、新たなモデルを構築し、同対策の生物多様性の効果を評価する。本年度は、対象地域である、滋賀県最大の内湖である西の湖流域(長命寺川流域)において、環境直接支払が水棲生態系に与える影響の費用対効果分析をおこなった。陸域流出過程は,分布型流出解析モデルであるAIST-SHANELにより,農法変化による栄養塩流出量への影響をモデル化した。環境直接支払の採択プロセスおよび実施費用については,対象地域における農家アンケートに基づくコンジョイント分析により推計した。 多面的機能支払交付金は、多面的機能の維持・発揮や地域資源の質的向上を図る共同活動を行う活動組織に対して交付金を支給するという制度である。本研究では、本交付金の農村振興への影響について、滋賀県近江八幡市白王町における地域づくりの取り組みをモデル化するために、昨年度に引き続き現地調査を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境保全型農業直接支援対策の評価に関しては、栄養塩流出のモデルと採択プロセスの分析を統合した結果,環境直接支払における支払水準の向上は保全型農業の採択面積を有意に拡大し,西の湖に流入する栄養塩を削減する効果が確認できた。ただし,水棲生態系を回復するためには一定規模以上の取り組みが必要であり,実施期間も長期(15~20年以上)に亘ることが必要である。以上のことから,現行の制度はその規模と期間を大きく見直す方向で制度設計を再検討する必要があると考えられる。 農村振興の評価に関しては、連携研究者(農林水産政策研究所・林岳)が農村振興に関係する指標を検討するために、イギリスを訪問した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、最終年度であり、研究のとりまとめを行う。環境保全型農業直接支援対策の評価に関しては、水文モデルと農業者の行動モデルの精緻化を図る。また、農村振興の評価に関しては、現地調査を重ね、近江八幡市白王町の取り組みのモデル化を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査の回数が想定していた回数を下回った。
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次年度使用額の使用計画 |
とりまとめの年度であるため、現地調査および研究打ち合わせの回数を多くする。
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