福島第一原子力発電所爆発事故以来、国内の電力及びエネルギーをめぐる環境は大きく変化している。原発リスクが確率論で表される机上の空論ではなく、実際に回避すべきリスクとしての認識が広がっている。しかしながら、原発リスクをゼロにするうえで不可欠な再生可能エネルギーが原発に代替するためには、課題もある。また、再生可能エネルギーの普及拡大は、電力システム改革と連動しているため、電力及びエネルギー政策全般を射程に入れた包括的なアプローチが不可欠である。 このような状況下で、日本の電力システムは大きな転換期を迎えている。電力小売が完全自由化され、今後さらに発送電分離が実施される予定である。他方、再生可能エネルギーの導入は固定価格買取制度の導入を受けて、増加傾向にある。発電と密接に関わる温暖化ガスの排出問題も緊急を要する。他方、固定価格買取制度導入以降、再生可能エネルギーの導入が確実に進展している。欧米ですでに進行している現象がようやく日本にも波及している状況である。 このような課題に取り組むために、本年度はエネルギーに関する基本的なデータを整理し、分析を行った。温暖化ガス排出問題と関わる一次エネルギーと電力の需給に関するデータを整備するとともに、電力会社、特に東京電力の事業展開について検討を行った。また、ドイツで現地調査を実施し、ドイツの電力自由化の経緯と再生可能エネルギーの拡大状況と諸課題について調査を実施した。また、現地において諸施設を見学し、調査の参考とした。
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