研究課題/領域番号 |
26450325
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
大室 健治 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 近畿中国四国農業研究センター営農・環境研究領域, 主任研究員 (70455301)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 農業会計 / 有生固定資本財 / 永年性木本作 |
研究実績の概要 |
当該年度の研究目的は、永年性木本作経営における費用・収益曲線の経年変化の解明である。実施した研究の具体的内容は、まず、果樹のなかでもブドウを対象として、収益性の経年変化に影響を与える要因である主要市場の直近5ヵ年分の入荷量と単価を分析した。その結果、ブドウ全体の主要市場における入荷量と単価の特徴を把握した上で,品種(巨峰、デラウェア、ピオーネ、シャインマスカットの4品種を選定)ごとの入荷量と単価の動向,さらに主要都府県(山梨、長野、岡山等)における品種構成の変化,並びに京阪神・京浜市場における直近年の月旬別の動向を把握することで両市場の構造の相違点を明らかにした。 また、岡山県で先進的に施設型のブドウ経営を展開する農業者に対して経営調査を実施し、そこでの固定資本財としての果樹の資産評価法と改植の考え方を把握した。この経営では、植樹から成木化までの期間を3年とし、成木後は10年を目処に改植を行っている。この理由は、一般に施設型ブドウの場合は樹木への負担が大きいため、維持費をかけて老木を長期間利用するよりも、生産性が高い若年木を短期間で利用後に改植を繰り返すほうが経済合理的であるという経営者の判断が働いていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
有生固定資本財を評価するためには、棚卸資産から固定資産へ転換する成熟年次の決定に際して市場価格を踏まえる必要があるため、当該年度は果樹のなかでもブドウにおける主要市場の入荷量と単価の時系列分析を行い、経年変化の特徴を明らかにすることができた。また、単に税法基準に則るだけではなく、先進的な経営者が自経営の戦略的な経営行動に沿って有生固定資本財を評価し改植時期を判断している点も明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
有生固定資本財の成育成熟期については、所得税法上(所得税基本通達49-28(表2))では、かんきつ樹15 年、りんご樹10 年、ぶどう樹6 年、茶樹8 年となっているが、今後は、分析対象とする事例経営の費用・収益曲線の経年変化を踏まえ、定植時から数年が経過して当期の費用よりも収益が多くなる年次を成熟年次として特定し、また、成熟年次以降、収益が下降傾向に移る年次あるいは当該年次の費用を収益が下回る年次を改植適期として特定する。なお、果実価格の高騰や暴落並びに資材価格の高騰等の経営外部要因が影響することで収益と費用の急激な変化が生じている場合も想定されるため、それらの影響を除外するデフレ―ト処理の上で解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた消耗品が未購入となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
前年度に未購入となった消耗品を購入する。
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