前年度までに収集したブドウの市況情報に関するデータ、並びに、岡山県船穂地域の施設型ブドウ経営を展開するA氏や6次化事業を展開するB氏の経営データを分析した結果、先進的な経営者は自経営の戦略的な経営行動に沿って有生固定資本財の耐用年数を判断し、改植時期を決定していることを明らかにした。 具体的には、まず日本園芸農業協同組合連合会が発行する「京浜京阪神市場落葉果実・果菜類販売年報」によってブドウの市場構造を分析した結果,シャインマスカットを例にとると、産地別には山梨,長野,山形,岡山の出荷量が多く,また単価が高いのは岡山,長野,島根の順であった.このことから,産地戦略として2つの類型が抽出できる.すなわち,岡山や島根は量を抑えて高単価を形成しており、逆に山梨は中低単価であっても量的拡大を推進している。 以上の市場構造を踏まえつつ、岡山県船穂地域のA氏のような施設型ブドウ経営においては、樹木への負担が大きいために維持費をかけて老木を長期間利用するよりも、生産性が高い若年樹木を短期間で改植していくほうが経営合理性があると判断していた。 他方、神奈川県小田原市で複数の樹種を組み合わせて6次化事業を家族経営で展開するB氏においては、加工品等の付加価値販売が核となることから樹木の耐用年数を法廷耐用年数以上に長引かせることで生産コストを抑制することが重要な経営判断となっていた。これらのことから、永年性木本作経営における有生固定資本財の評価においては、単純に税法基準に則るのではなく、個々の経営の経営戦略に沿った経営管理基準とでも呼べるものによって判断することで経営妥当性が高まるものと考えられた。
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