アフリカの土地制度改革において、土地所有の制度化が、農業への投資誘引を改善し、換金作物などへの長期的投資を促進するかという問題が活発な議論の対象となっている。調査地のガーナ西部を含むアフリカ諸地域で、個人・家計の土地アクセスは、親族からの割り当てや母系相続などの伝統的土地制度による場合が多い。これは土地を持たない家計とのリスクシェアリングに寄与する反面、土地アクセスが常に再交渉の対象となり得るため長期的安定性に劣る。 多年性の換金作物の普及は農業所得向上への役割が期待されるが、それらは初期投資に加え、収穫開始までに数年を必要とするため、植樹投資には土地アクセスの長期的安定が前提となる。この認識に基づき、土地登録制度による土地使用権の私的所有権化がアフリカ各地で試行的に導入されつつある。この研究では、公的な土地登録制度と、ゴムプランテーション企業による土地権利再整理のための介入の効果を評価した。 土地登録制度の効果は、研究によって実証的な結論が異なることが知られている。本研究は土地所有形態による投資阻害要因の違いを吟味し、投資阻害要因が働くのは親族から入手した土地にのみであり、それ以外の主要な入手経路:村からの割当や購入、小作借入、私的購入では投資阻害要因がないことが分かった。実証研究間の結論のばらつきは、調査地による親族所有地の比率の違いで説明できる可能性がある。 土地制度改革については、土地権利再整理と土地登録の両方が植樹投資を促進すること、しかし生産性上昇への効果を持つのは権利再整理だけであることが分かった。また、耕作者の性別によるバイアスは植樹投資、生産性いずれについても確認されないが、推奨されている女性名義の土地登録は、生産性に対して大きな負の影響を持つ。使用権の確立のための登録・植樹が目的になっており、植樹後の投入が少ないことが主な理由と考えられる。
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