ハゼ科魚類のシロウオ・ヨシノボリ・ウキゴリやワカサギ・イトヨをはじめとする小型の通し回遊魚は,日本の河川に広く生息している.魚類相の河口から上流への連続性を保持し、小型回遊魚の生息場環境を保全・維持するため河川横断構造物には魚道が設けられている.しかし、現状でのこれら小型通し回遊魚に対する魚道設計は、経験的技術に依存しており、科学的根拠による高度な魚道整備が必要である.したがって、本研究は小型通し回遊魚の遡上環境を整える上で必要な遊泳能力について詳細に検討・解析し、下流域における魚道設計技術の向上に資するものである. 対象とした小型通し回遊魚を現地で供するため、フィールド的現地観測として河川水をそのまま実験装置に通水し、長方形管内に流速を与え一定距離の遊泳時間を計測する方法を採用した.研究対象とした魚は、青森県内の下流河川域から遡上する小型回遊魚のシロウオ・ワカサギ・ウキゴリ類である.最終年度は,データをさらに蓄積するため実験を継続した。遊泳実験は青森県内の岩木川下流の芦野頭首工地点で、対象魚(ワカサギ、ウキゴリなど)の遡上時期に合わせて行い、おもに5月、および7月、8月に集中して行った。供試魚採取は各関係機関と地元河川漁協の協力を得た。 最終年度のデータを加えて3ヵ年の実験研究を整理した結果,①シロウオの突進速度と遊泳限界流速、②ワカサギの遊泳能力、③小型ウキゴリ類の遊泳能力を明らかにすることができた。これらの遊泳能力を明らかにしたことにより、小型通し回遊魚を対象とした魚道設計に必要な水理諸元を提示することができた。本研究成果の一部は、水工学論文集72巻に掲載、平成27年度農業農村工学会応用水理研究部会、平成27・28年度農業農村工学会大会講演会で発表した。
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