研究課題
本課題では、実際に現場で生じるような非平衡な土の凍結・融解過程や多次元の凍結にともなう物質移動の予測を目指した系統的な実験と数値モデルの検討を目的とした。最終年度である28年度は植物根跡のような土中のマクロポアの存在が水蒸気の対流と凝結により土の凍結を遅延する効果を実験的に示すとともに、こうした現象を現状の凍結モデルで表すための見かけの熱伝導率の修正例を示した。また、地表の凍結層の融解浸潤過程にマクロポアの径やサイズが及ぼす影響を明らかにし、浸透水の再凍結過程をまとめた。次ぎに35cm長の一次元カラム実験に鏡面冷却式の小型水ポテンシャルセンサーを導入し、土の凍結・融解の進行にともなう非平衡な水ポテンシャルの変動を捕らえることに成功した。そして、温度変化に対する土中水の凍結融解の遅れが水分移動に及ぼす影響をポテンシャル勾配に着目してまとめ、現状のモデルが水分移動を過大評価する量を検証した。貼り付け凍結管を用いた点冷源による地表の冷却実験を行い、地中の3次元的な凍結進行過程を可視化した。そして、1次元モデルで近似可能な空間的・時間的スケールをまとめるとともに、貼り付け凍結管の冷却効率向上に、上面の断熱と冷却部の接触の改善が必要であることを示した。さらに、凍結層の下で生じる還元過程や凍土地帯の窒素・炭素循環を考えるため、不飽和水分移動過程にある土中の態の変化をともなう窒素動態を実験と数値解析に基づき検討した。特に好気的条件についてはイオン交換の平衡定数が水分移動の有無で異なること、吸着態と溶存態の硝化反応速度定数が水分移動や温度、pHでそれぞれ異なる可能性があることを示した。また、嫌気的条件については、水の流れに依存したpH分布の変化と鉄イオンの流出過程を明らかにした。以上の成果を関連学会で発表し、関係各誌に投稿した(三篇が掲載、三篇は投稿中)。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 3件)
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