研究実績の概要 |
本研究では、この現状を踏まえて根本的な問題の解決のため一般の擁壁工での石積み擁壁の再普及を目指す研究と、現状の石積み技術の保全を目指す対症療法的研究を行っている。本研究の成果のめざす,石積み技術の保全、地域独自の農村景観を持続していくために必要な、農村の持つ自己治癒能力(ホメオスタシス)のための技術的課題の抽出に関して、平成26年度は石積み技術の保全につながる模型実験による石積みの強度評価と農村景観の維持につながる石垣の石材の使用傾向分析を行った。研究成果は順次学会で発表を行った。 模型実験は石垣の代表的な積み方である布積みと布積みの中でも比較的悪い積み方とされる目地の通った布積みともたれ式擁壁を比較した。外力は地震力を水平加速度とみなす震度法の考え方で水平加速度を加えた。その結果、石垣はもたれ式擁壁と同程度の強度があることがわかった。小庵 雅史・岡島 賢治 ”水平加速度をうける石積み擁壁の石組みの違いによる強度比較,農業農村工学会京都支部研究発表会,pp.168-169,2014.11,岐阜 次に、農地石垣で使われている石の由来を現地調査より検討した。現地調査として和歌山県海南市で石灰岩を母岩とする地域を調査した。調査法は、石垣中の100の石の石材を岩質ごとに分類した。その結果、農地石垣で使われる石材は基本的に母岩の影響を強く受け、さらに標高が高いところの石材が使われる傾向があった。西脇 祥子・岡島 賢治 ”石灰岩を指標とした農地石垣の積石分布傾向”,農業農村工学会全国大会講演要旨集 pp.522-523 , 2014.9,新潟、西脇 祥子・岡島 賢治 ”棚田の積石と表層地質の関連性”,2014年度冬季棚田学会発表会,2014.12,東京 平成26年度の研究およびその成果から本研究は概ね計画通りに進捗しており次年度以降も計画通り研究を推進していく予定である。
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