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アンカーはのり面に施工されたアンカー全体の緊張力でのり面の安定を保持する機構を有している。このため，アンカーに作用する緊張力は背面地山の影響を受けて変化し，個々のアンカーは背面地山状況を反映するセンサーとしての機能を有している。本研究では，従来考慮されなかったアンカーがセンサーとしての機能を有することを利用し，アンカー荷重変化ならびにアンカー荷重と温度との相関関係を用いた，新たなのり面の安定性評価手法の開発を行なうものである。
平成28年度は，調査を継続している地すべりにより変状が見られるアンカーのり面において，開発を行ったアンカー荷重と温度との相関を用いたのり面安定性評価システムの導入を行い，その有効性の確認を行った。これに加えて，防錆が十分でない旧タイプアンカーが施工されたのり面を対象に，アンカー緊張力の面的調査を実施するとともに，アンカー荷重の測定，およびアンカー荷重と温度との相関関係について検討を行った。面的調査および現地踏査の結果より，のり面変状は確認されず安定したのり面と判断した。その上で2箇所のアンカーを対象に，荷重計と油圧ディスクを設置し，両者のアンカー荷重と温度を計測するとともに，アンカー荷重と温度の相関を用いたアンカーのり面の管理手法について検討を行った。その結果，荷重計と同様油圧ディスクにおいてもアンカー荷重と温度との相関は高く，温度影響を受け精度が落ちるとされる圧力ディスクにおいても問題なく使用できることを明らかにした。また，アンカー荷重と温度との1次回帰式に基づく温度補正荷重は，荷重計と同様圧力ディスクにおいても安定した荷重値が得られた。この結果，温度変化の影響を受けやすく精度が劣るとされる油圧ディスクも，温度を考慮に入れることで荷重計と同程度の評価が可能であることが明らかとなった。
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