研究課題/領域番号 |
26450344
|
研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
近森 秀高 岡山大学, その他の研究科, 教授 (40217229)
|
研究分担者 |
永井 明博 岡山大学, その他の研究科, 教授 (80093285) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 洪水比流量曲線 / 確率流量 / 洪水危険度 / 気候変動 / DAD関係 |
研究実績の概要 |
平成27年度は,検討対象流域を拡大し,太田川・那珂川・大淀川・四万十川(渡川)・神通川の5流域を対象として6定数型DAD式を用いた確率DAD解析を行い,これに基づいて得られる確率洪水比流量曲線を用いて,将来の洪水規模の変化予測を行った。検討結果は以下のとおりである。 1)精度の高いDA関係を求める手法として,最大面積雨量が得られる領域の探索範囲を広げた「改良変形面積法」を提案した。その結果,従来の対象雨域決定法を用いてDA関係を求める場合,面積の増加に従って単調に減少するべき面積最大雨量が増加する場合が見られたが,「改良変形面積法」を用いることにより精度の高いDA関係を求めることができた。 2)将来の確率DAD関係を求める際,地域気候モデルである雲解像領域大気モデルによる将来の降雨データを基に,降雨パターンの季節変動を考慮するために現在の月別年最大面積雨量データを用いてバイアス補正をした将来データを用いた場合と,季節変動を考慮せずに年最大面積雨量を用いてバイアス補正した場合とを比較した。その結果,月別年最大面積雨量を用いると,面積の増加に従って確率面積雨量が増加する場合が見られるなどの難点があり,季節による降雨パターンの変化を考慮せず年最大面積雨量を用いてバイアス補正する方が高い適合性を示すことが分かった。 3)200年確率洪水比流量曲線を比較すると,将来の洪水比流量増減の傾向は,地域および流域により異なり,太田川流域では全ての面積に対して将来の洪水規模が大きいことが推察されたが,那珂川では全ての面積に対して変化は小さく,洪水規模の将来変化が小さいことが予測された。大淀川・四万十川・神通川流域では,小面積流域に対しては将来が現在を上回ったが,大面積流域では下回り,これらの流域では将来,小流域では洪水の規模が大きくなるが,大流域では逆に洪水規模が小さくなる可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでは,岡山県吉井川流域を中心として検討を続けてきたが,本年度(平成27年度)は,対象流域を拡大して,一級河川流域から太田川・那珂川・大淀川・四万十川(渡川)・神通川の5流域を選定し,これを対象として確率洪水比流量曲線の将来変化予測を行った。 これらの流域を対象とした検討では,前年度の検討により導入した6定数型DAD式が現在および将来のDAD関係に適用され,いずれの流域でも従来の4定数型DAD式よりも高い適応性が示された。この6定数型DAD式に基づいて得られる洪水比流量曲線にはより高い推定精度が期待され,前年度に,対象流域を広げずに検討を行ったことが功を奏したと考えている。 また,6定数型DAD式を用いた検討の中で,空間分布型降雨データからDA関係を抽出する方法と,将来の空間分布型降雨データのDAD関係をバイアス補正する方法についても見直しを行い,これにより確率DA関係の推定精度が改善された。これらの検討結果は,とくに将来の確率洪水比流量曲線の推定精度を改善するために重要な成果である。 以上のことから,本研究の進捗状況は,当初の予定とは若干異なるものの,おおむね順調に進展しているものと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年度に当たり,本研究のとりまとめを行う。この中で,将来変化を統計的に評価する方法について再検討する。一昨年度に検討したリサンプリング手法による推定値の分布を統計的に比較する方法に加え,地域気候モデル(RCM)による複数の将来予測結果に基づいて洪水比流量推定値の統計的分布を得る手法についても検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品調達のスケジュールが遅れたため,若干の残額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究結果とりまとめに必要な物品調達費に充当する予定である。
|