研究課題/領域番号 |
26450346
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
佐々木 貴信 秋田県立大学, 付置研究所, 教授 (00279514)
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研究分担者 |
永吉 武志 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (50331286)
荻野 俊寛 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80312693)
後藤 文彦 秋田大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10261596)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 農業水利 / 木杭 / 基礎 / 石積み / 護岸 / 水路 / 多自然型 / 環境配慮 |
研究実績の概要 |
本研究では、小規模な農業用水路を対象に、木杭基礎や石積み護岸を利用した低コストで環境負荷の少ない実用的な護岸工法の開発とその実用化を目的としている。申請者らは、秋田県産のスギ丸太や自然石(男鹿石)の新規用途開発の一環で、老朽化した秋田県大潟村内の排水路を対象に木杭基礎と石積による護岸工事を試験的に行ったところ、木杭基礎は軟弱地盤の水路の沈下対策としても有効で有り、石積みは従来工法に比べて経済性や景観性に優れていたことから、実用技術としての可能性を見いだした。本研究では、自然素材を用いた水路工法を実用化するために、実施工に基づく性能評価や、工学的に裏付けされた設計法の提案を行うことを目的として、①木杭基礎の設計、②石積み護岸の設計、③構造物の安全性の検証のテーマについて分担して研究を進めているが、各テーマ共におおむね順調に研究を進展させることができた。 なお、大潟村内の既設用水路の大規模改修工事において本研究の成果の一部が採用される可能性が生まれたことを初年度の特筆すべき研究成果として挙げたが、2年目の研究ではこれが実現し、東北農政局が行う用水路改修工事の比較工法の一つとして採用され、試験施工を行った。ここでは主に①のテーマに関連して,既存の木杭基礎の設計法を参考に試設計を行い、これを基に試験施工を行っている。試験施工の際には、各種の計測を行っており、次年度の研究で設計法の妥当性の検証を行うと共に、③に関して試験施工を行った水路の性能評価を行う計画である。 また、②および③の研究テーマについては、軟弱地盤の水路護岸に木杭基礎と石積みを用いたときの構造安全性に関する解析を行い、この結果に基づき実用的な木杭の長さや打設範囲などを示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、小規模な農業用水路を対象に、木杭基礎や自然石などの自然素材を用いた水路工法を実用化するために、実施工に基づく性能評価や、工学的に裏付けされた設計法の提案を行うことを目的として、①木杭基礎の設計、②石積み護岸の設計、③構造物の安全性の検証のテーマについて分担して研究を進めている。 ①のテーマについては、初年度に得られた研究成果の採用機会が実現化して、東北農政局が進める大潟村内の既設用水路の大規模改修工事の比較工法の一つとして採用され、試験施工を行うことができた。これに際し、施工箇所の地下水位や土質などの地盤を考慮した、木杭の長さや配置などの設計を詳細に行い、設計法を確立する目処が立った。 ②のテーマについては、軟弱地盤の水路護岸に木杭基礎と石積みを用いたときの構造安全性に関する解析を行い、この結果に基づき石積みの護岸の重量に対して実用的な木杭の長さや打設範囲などを示すことができた。 ③のテーマについては、②の解析による検証のほかに、①の試験施工の際に設置した水位計や木杭基礎のひずみ計のモニタリングや水路の沈下量計測を行っており、これらの計測結果から設計の妥当性や構造物の安全性が確認されつつある。 以上より、各テーマ共に順調に進展していることから、全体としては、本研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
テーマ①の木杭基礎の設計については、当該年度に実施した試験施工時に設置した各種の計測機器の計測結果や、定期的に実施している水路の沈下量の計測の結果の評価を行い、木杭基礎の設計法の検証を行う。 テーマ②の石積み護岸の設計については、当該年度に実施した解析結果を整理して、設計のマニュアル化の検討を行う。 テーマ③の構造物の安全性の検証については、①、②の結果に基づいた安全性の検証を行うことで、実用化を念頭に置いた設計・施工に関するマニュアルの提案を検討すると共に、水路工事の発注者へ向けた研究成果の情報発進を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度は主に、用水路改修工事を対象とした木杭基礎の性能を評価するための試験施工にかかる、地盤調査費や資材、計測機器の購入等を行ったが、試験施工は東北農政局の事業として行われ、計測器の設置等の作業費も負担いただいたため、その分の費用として次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当該年度に実施した試験施工に関して生じる、計測データの回収や水路沈下量の定期計測など、次年度に予定している作業の人件費として使用する。
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