研究課題/領域番号 |
26450347
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
岡澤 宏 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (30385504)
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研究分担者 |
三原 真智人 東京農業大学, 地域環境科学部, 教授 (00256645)
石川 裕太 特定非営利活動法人環境修復保全機構(研究センター), その他部局等, その他 (90735309)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 窒素 / 石炭灰 / リサイクル / 植物栽培 / 吸着現象 / クリンカアッシュ |
研究実績の概要 |
本研究課題は,産業廃棄物であり改正リサイクル法の対象であるクリンカアッシュ(石炭灰の一種)の農業利用について検討するものである。H26年度は,農業排水を想定したクリンカアッシュの窒素浄化機能について室内実験を行い,その効果を検証した。具体的には,室内に2つの水槽を設け,一方の水槽には10mg/Lの窒素汚濁水を10L充填した。また,他方の水槽にはクリンカアッシュを充填し,2つの水槽を循環ポンプで連結し,窒素汚濁水を循環させ,一定時間ごとに汚濁水の濃度を計測した。また,粒径の異なるクリンカアッシュを用いることで,粒径による窒素浄化の度合いを比較検討した。その結果,粒径によるクリンカアッシュの窒素浄化に違いが見られた。 また,簡易実験として水質浄化に使用したクリンカアッシュに吸着している窒素の植物による再利用についてもコマツナを用いた栽培実験で検討した。使用済みクリンカアッシュにコマツナの種を植栽し,クリンカアッシュの粒径がコマツナの生育速度に及ぼす影響を検討した。その結果,未調整のものと粒径の細かなクリンカアッシュについてコマツナが生長し,粒径の細かなクリンカアッシュではその成長速度も速いことが確認できた。 これまでにクリンカアッシュによる窒素浄化に関する報告は流水速度の非常に小さな環境でのみ行われており,今回のように滞留時間が2分といった流速の速い環境下での実績は見られないことから,重要性の高い実験だと考えられる。また,速い流水条件下においてもリサイクル資源としてクリンカアッシュを窒素の浄化材として利用できることが明らかになったことから,リサイクル分野において本研究の意義も大きいと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り,初年度ではクリンカアッシュの窒素浄化機能について明らかにすることができた。ただし,当初予定していたカラム試験では滞留時間が遅かったため,水槽を用いた浄化実験によって窒素浄化機能の解明を試みた。また,水質浄化で使用し,窒素成分が含有するクリンカアッシュを活用した植生栽培の実験についても実施することができた。植生にはコマツナを用いて,コマツナの茎長を成長指標として実験を行い,粒径の細かなクリンカアッシュを含むとコマツナが生長した。これはクリンカアッシュに吸着した窒素成分を植物が利用したためと推察できた。当初の予定通り,1年目にクリンカアッシュの水質浄化と植生利用の可能性を示唆することができたことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,速い流水条件下でクリンカアッシュの窒素浄化機能を明らかにすることができた。また,植生実験についても実施することができた。一方,研究計画で述べたクリンカアッシュと植生帯との組み合わせた窒素浄化試験については成果が上げられていないことから,2年目にはこの実験に重点を置いて研究を進めたい。 また,窒素吸着をしたクリンカアッシュの植物利用についてもコマツナを対象としただけで有り,クリンカアッシュの粒径がどの様なメカニズムで植物に利用されるのかについては不明な点が多い。今後は植生実験についても改めて実験を行い,クリンカアッシュに吸着した窒素成分の植物利用について定量化を試みたい。さらに,一部の石炭灰には重金属など有害物質が含有していることが明らかにされている。クリンカアッシュについても有害物質の影響を検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度に本研究課題の成果発表として,国際会議(Agrosym 2014)への参加に係わる旅費と参加費を計上していたが,東京農業大学大学院重点化研究プロジェクトの予算が獲得できたことから,科研費から支出を見送った。同じ学会がH27年10月にボスニア・ヘルツェゴビナで開催されることから(Agrosym2015),次年度に科研費より旅費と参加費を支出予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
H26年度の未使用分を,H27年度の国際会議への参加費と旅費として使用する予定である。また,H27年度も引き続いて水質実験と植生実験を実施することから,水質分析にかかわる分析機器代,薬品代,重金属などの分析委託費,また,実験で使用するクリンカアッシュや土壌のサンプリングに係わる調査費,研究成果の公表に係わる論文作成費,学会参加費(The 7th International Conference on Environmental and RuralDevelopment, Cambodia, 2015年1月に開催予定)への支出を予定している。
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