当研究課題では,農業水路の水から抽出したDNA(以下,環境DNA)の中に,水田水域の代表魚種であるドジョウ(Misgurnus anguillicaudatus)とタモロコ(Gnathopogon elongatus)のDNAが存在するかどうか検出し,その有無に基づいて両種の生息状況を評価する手法を開発する. 平成26年度は,回収効率の高い環境DNAの抽出法について検討し,採水,ろ過,環境DNA抽出の各工程において次の実験を行った.採水については,採水量の違いによる環境DNAの抽出量の差を明らかにするため,水1Lと2Lから抽出した環境DNA濃度を比較した.水1Lからの環境DNA濃度は数ng/μLであったが,2Lでは数10ng/μLとなり,2Lの方が1Lよりも10倍程度,回収効率が高いことを確認した.ろ過については,フィルター材質の違いを特定するため,メンブレンとグラス繊維フィルターによる環境DNA濃度の違いを調べた.両フィルターともに環境DNA濃度に大きな差は認められず,コストの低いグラスフィルターの方が使用にあたって経済的であると考えられた.環境DNA抽出については,市販のカラムキット(シリカメンブレン),標準フェノール抽出法,熱変性法による環境DNA濃度の違いを確認した.環境DNA濃度はカラムキットで比較的安定した値が得られ,フェノール法と熱変性法では環境DNAが回収できない状況も生じた.抽出手順の煩雑さ,抽出後の廃液処理等も考慮すると,カラムキットが環境DNAの抽出に適していると判断された.
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