研究実績の概要 |
本研究は、土質材料で作製したダム模型を用いた遠心載荷振動模型実験を実施して巨大地震によるダムの変形を再現し、これを高精度の画像解析と数値解析で多面的に分析することで、フィルダム堤体の亀裂発生メカニズムおよび大規模崩壊への進展メカニズムを解明することを目的としている。 平成26年度は、豊浦砂とカオリンを乾燥重量比4:1で混合した混合土(乾燥密度1.880g/cm3)を用いて作製したフィルダム堤体模型を用いて実施した遠心載荷振動模型実験の画像解析を行い、堤体内部の変位分布、振動特性、履歴の把握を行った。作用させる地震波はサイン波(1G場換算で1.5Hzで16周期)を用い、変状の進行を詳細に把握できるように、16段階(目標最大入力加速度を100(1回),200(1回),300(1回),400(1回),500(4回),600(8回)(単位は全てcm/s2))に設定した。なお、別途に一般的な数値解析手法を用いて予備的な数値解析を行い、クラック発生直前までの観測された挙動との整合性を確認した。 遠心実験では、目標最大入力加速度400cm/s2段階(以後、“400cm/s2段階”と記す。他の段階も同様。)で斜め方向の亀裂が天端から少し下がった斜面上に発生し、その後、500cm/s2段階1回目で鉛直方向の亀裂が天端中央部に発生した。その後、振動を加えるに伴って斜面上の亀裂と天端中央付近の亀裂の数と深さが次第に発達した。最終加振終了までの亀裂の発達方向は発生時とほぼ同じ方向であり、スベリには進展しなかった。 模型横断面を対象にした画像解析では、300cm/s2段階から水平変位の左右方向の分岐箇所が底部から堤頂部付近まで線状に繋がって発達し、堤頂部付近の分岐線は亀裂の発生箇所とほぼ一致することが確認できた。すなわち、堤頂部付近の亀裂は堤頂部付近の部分的な変形・変位によって発生するのではなく、堤体全体の変形・変位が表面部に表出したものであることを示唆している。このことは、新たな知見と言える。
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