青果物の鮮度低下を促進するエチレンを周期的な短時間プラズマ照射により低電力で効率良く分解するための吸着・濃縮型プラズマ分解装置を構築することを目的として研究を行い、以下の成果を得た。 (1)管型プラズマ反応器用メンブレン状触媒管の作製とエチレンプラズマ分解への応用 メンブレン状アルミナ管にシリカコーティングと銀微粒子を担持することにより、エチレン吸着能を150倍も増加できたが、単にプラズマを照射しても吸着したエチレンはあまり分解されずに脱離するのみであった。そこで、触媒・プラズマ領域の下流に小さな第2プラズマ領域を設けて脱離したエチレンを分解するように装置を改良したところ、短時間プラズマ照射によるエチレン分解速度は24%も増加した。また、プラズマ照射後10分程度は反応器出口におけるエチレン濃度が低く保たれたことから、Ag触媒がエチレンを吸着・濃縮し、プラズマ照射による分解効率を増加させたことが確認された。現在、これに関する論文の投稿を準備している。 (2) 平板積層型プラズマ分解装置の開発 管状よりも大型化が容易な平板積層型プラズマ分解装置を構築するため、アルミニウム陽極酸化法と逆電剥離法による平板多孔質メンブレン状触媒の作製を検討した。当初は大きな剥離膜が得られなかったが、陽極酸化、電圧降下、逆電圧印加、等の条件を調整したところ、印加電圧80V、印加時間16時間で最適なメンブレン膜を作成できた。SEM観察より、このメンブレン膜には表裏を垂直に貫通した細孔が多数存在し、その径は溶液側表面で約180 nm、剥離側では10 nm以下であることが確認された。シリカコーシング処理により表面積は1.3倍に増加した。Agを担持すると表面積はシリカコーティング前よりも小さくなったが、エチレン吸着量は13倍にも増加した。現在、この触媒を用いた平板型プラズマ反応器の構築を行っている。
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