これまでの研究成果を活かし,コンバイン上での音響センサを穀物乾燥機に応用する試みを行った。完全な非破壊測定であるうえに測定頻度はほぼ連続的であることから,現行の水分測定法を補完しながら新たなプロセス制御を行うための技術シーズをめざした。 縦型乾燥機(容量 2000 kg)の昇降機上方で穀粒が投てきされ衝突する曲面に1つ目のイヤホンを,天井下の横送りオーガと接続した中央の均分器から穀粒が投てきされ衝突する側壁に2つ目のイヤホンを接着し,信号を記録した。乾燥中に操作パネルに示される穀粒水分(供試機に内蔵,真値と扱う)を,定点カメラにて撮影した。衝撃ごとに計算された音響スペクトルを,1回の放出サイクルごとに平均し,その時刻での水分と関連付けることを試みた。 昇降機では,周波数を問わず水分と正の相関が観察された。水分変化によるバケットでの汲取り量の違いをそのまま反映してしまった可能性がある。側壁では,周波数を問わず水分と負の相関が観察された。高水分になれば衝撃音が「鈍く」なるという直感と一致する。任意の2周波数を用いた線形重回帰で,原スペクトルから籾水分の推定を行ったところ,標準誤差が最小で0.1%(水分17-14.5%,衝撃音を発生するための加速装置である均分器が作動する水分範囲が設定されていたため限定的となった)ときわめて高精度で推定が可能であった。 一方,コンバイン上にても追加実験を行った。昨年度と同様の解析方法を用い,音響センサをイヤホンからより頑強な圧電スピーカに変更して,籾およびコムギで水分検出実験を行った。その結果,標準誤差は籾で1.5%(水分15-26%),コムギで1.7%(水分13-30%)を得た。
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