研究課題/領域番号 |
26450356
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
濱中 大介 鹿児島大学, 農学部, 准教授 (60399095)
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研究分担者 |
田中 史彦 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30284912)
内野 敏剛 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70134393)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | バブル水 / 微生物 / 食の安全 / バイオフィルム |
研究実績の概要 |
生鮮農産物や食品製造工程における物体の表面に形成されるバイオフィルムについて、直径が数ナノ~数マイクロメートルの気泡含む超微細気泡混合水(バブル水)を用いた除去効果について検討した。まず、バブル水の諸特性を確認したところ、濁度、酸化還元電位および溶存酸素濃度は、それぞれ1500(ホルマジン度)、560mVおよび10mg/Lで安定する一方、電気伝導度はバブルの吐出時間の延長に伴って上昇することが確認された。このバブル水を用いてSalmonella属菌の殺菌効果を検討したが、バブル水のみでは生菌数の減少効果はほとんど認められなかった。次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)水との併用効果を検討したところ、NaClO水のみでは殺菌効果が認められない濃度であっても、バブル水として処理した場合には90%程度の生菌数減少効果を示したことから、NaClOとの接触効率が高まり、効果が増強されたと考えられた。バブル水処理後に同濃度のNaClO水を加えた場合では、殺菌効果を増強できなかったことからも、バブル水との同時処理が効果的な殺菌効果を示すことを裏付けるものである。 バイオフィルムの除去効果については、Pseudomonas属菌に関して実施した。35℃で形成させたバイオフィルムは、成熟度の違いに関わらずバブル水によって除去されやすいことが明らかとなった。一方、5℃で形成させたバイオフィルムは、成熟度が高くなるほど除去され難く、35℃と比較すると10倍程度のバイオフィルムが残留していた。また、脱イオン水処理よりもバブル水処理で多くのバイオフィルムが除去される傾向を示した。以上の結果から、高温で培養されたバイオフィルムは構造的に弱く、除去されやすいこと、さらにバブル水はその効果を加速させる傾向があることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度の研究は、バイオフィルムの除去効果に加えて、殺菌効果についても一定の成果を示すことができたことから、研究進捗は概ね順調であるといえる。バイオフィルム除去については、Pseudomonas属菌、殺菌についてはSalmonella属菌について集中的に実施したことで、効率的に試験結果を蓄積できたと考えられる。バブル水発生装置の故障等により、研究遂行を中断せざるを得なかった期間もあったが、効率的な実験計画構築によって、大きな遅延とはならなかった。一方で、BacillusやStaphylococcus等、病原性や芽胞形成、鞭毛・繊毛を有する細菌、青果物の腐敗原因となる酵母が形成するバイオフィルムに対する効果については、継続して実施する必要がある。さらに、バブル水の物性については、粒子径やゼータ電位の測定についてやや遅れが認められるが、測定法については確立しているため、次年度の試験開始後、早急に対応可能である。
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今後の研究の推進方策 |
27年度は、バブル水の物性について、粒子径とゼータ電位に及ぼす温度・pHの影響をはあくするとともに、Pseudomonas属以外の微生物が形成するバイオフィルムの除去効果について検討する。これまでは空気のみを用いたバブル水を利用した除去効果の検討であったが、酸素、二酸化炭素、窒素の比率を変化させることで、異なるガス組成が除去効果に及ぼす影響についても把握する。除去効果の評価については、これまでの平板培地を用いた微生物数の測定および分光光度計を用いた染色バイオフィルム量の測定に加え、レーザー顕微鏡および走査型電子顕微鏡による形状変化の観察を行うことで基礎データを蓄積し、青果物およびカット青果物(キャベツ、キュウリ)の表面に形成されたバイオフィルムの除去効果についても検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度は物品としてマイクロプレートリーダ(約68万円)を購入、また旅費として約55万円を使用したが、分析について、大量の試薬やプラスティック製品を使用するには至らなかった。またガラス器具類の破損、学生の人件費も最小限に留めることができたことから、予想よりも37万円程度少なく試験遂行が可能であった。
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次年度使用額の使用計画 |
27年度は、購入したマイクロプレートリーダを用いた大量サンプルの分析と、微生物数の測定ならびに品質・内部成分の分析について実施する予定であり、この試験において、試薬と使い捨てプラスティック類使用の大幅な上積みが予想されるため、この部分に繰り越し額を充てる。また、研究成果が着実に取得されていることから、年度中に国内外での学会発表を計画しており、旅費への支出に充てる計画である。
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