本研究課題の目的は、多孔質のセラミックと透明の塩ビ管、シリコン栓で作製した模擬植物を使い、植物環境を計測する手法を開発することにある。開発する手法は、土壌の水ポテンシャルの計測手法、ポテンシャル蒸発量の計測手法、植物が受けている水分ストレスの計測手法の3つである。 土壌の水ポテンシャルの計測に関しては、土壌がpF2.7(-50kPa)以上に乾燥すると模擬植物(根)から水が滲出し始め、滲出水量と土壌の水ポテンシャルとはpF4.0(-1000kPa)までの範囲で相関関係が認められた。ただし、pF2.9(-80kPa)以上では土壌の種類によって関係が異なり、水ポテンシャルが同じであれば粘土質土壌ほど滲出水量が多くなった。 ポテンシャル蒸発量の計測に関しては、セラミック板の上面にシリコンを塗り、下面からのみ蒸発する模擬植物(葉)を作製した。蒸発した水量を蒸発面の面積で除すことにより算出した蒸発量は、季節にかかわらず小型蒸発パンの蒸発量とほぼ一致することを明らかにした。 植物が受けている水分ストレスの計測に関しては、カンキツを対象に試験を行った。模擬植物からの1日当たり滲出水量が大きいほど葉内最大水ポテンシャルは小さくなり、カンキツは強い水分ストレスを受けていた。滲出水量を梅雨明けから収穫まで積算した値が大きい地点のみかんほど糖度が高くなった。カンキツは強い水分ストレスを受け続けるほど糖度が高くなることから、積算した滲出水量は水分ストレスを積算した指標になることを明らかにした。 模擬植物(葉)に温度計を取り付け、セラミック板からの水の蒸発による気化冷却を利用して気温と湿球温度を測定する方法を開発した。
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