研究課題/領域番号 |
26450360
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
帖佐 直 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10355597)
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研究分担者 |
伴 琢也 東京農工大学, 農学部, 准教授 (20325046)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ブルーベリー / 茎径計測 / 休眠期 / 萌芽期 / 周期変動 |
研究実績の概要 |
1.休眠期から萌芽期にかけてのブルーベリーの様体についてモニタリングするとともに、休眠が打破される様子について調査した。様体の指標としては、カンチレバー式の変位計により非破壊・連続的に茎径を計測するものとし、休眠打破については、萌芽率(全体の芽の数に対する萌芽した芽の割合)を調査した。いずれも、人為的に低温状態とする試験区を設けた。低温での栽培期間を長くすることで萌芽が促進されたが、茎径の成長や周期的な変動との関連について明確な傾向は確認できなかった。 2.萌芽期のブルーベリーについて、萌芽の推移と茎径変化との関連について検討した。芽が緑色になる時期から茎径の収縮と膨張からなる周期変化が明確になり、肥大成長も促された。いずれも葉の展開とは別に確認される水分移動や成長に起因するものであり 、茎径が萌芽開始時のブルーベリーの様体を早期にモニタリングする指標となることが示唆された。肥大成長は、前年に蓄積された樹体内の貯留養分にも関連すると考えられ、栽培履歴の影響についても検討する必要がある。 3.今後のマルチモニタリングを想定し、より簡易な茎径のモニタリング手法として、ひずみゲージを貼付けたゴムシートの適用を試みた。シートは茎に巻きつけてクリップで固定することで使用する。既往の手法にくらべて、安価、軽量であることが特徴である。茎径の変化に応じたセンサからの出力を確認したが、膨張過程と収縮過程では異なる遷移過程をたどり、さらに温度変化の影響を強く受けた。膨縮の傾向を探るセンサとしては有効であるが、変化の絶対量を扱う際には注意が必要である。 以上の成果について、「ブルーベリーの生育モニタリングに関する研究-ゴムシートを用いた茎周囲長計測-」(農業食料工学会関東支部第51回年次大会)、「萌芽期のブルーベリーの茎径変化」(農業環境工学関連5学会2015年合同大会)として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)環境要因と茎径変化の関係 初年度は、光環境の影響による茎径の変化の様子についての解析を行い、人為的に明暗の周期を変えることで、茎径の膨縮、および肥大成長の様子が変化することを示した。 本年度は、ライフサイクルを調節するうえで重要となると考えられる休眠期から萌芽期にかけてのブルーベリーの様体について検討した。その際、低温状態を変化させた実験区を設けることで、人為的な熱環境の制御の可能性についても考察した。温度制御により萌芽の様子は変化したが、それに応答する茎径の変化は確認できなかった。休眠期においては茎径以外の指標をモニタリングする必要があると考えられたが、萌芽期においては、葉の展開前に、周期変動や肥大成長を確認でき、有効な指標となることが示唆された。 2)モニタリング手法の確立 初年度は、ブルーベリーの茎径変化をモニタリングするにあたり、カンチレバー式の装置の適用により、適切なモニタリングが可能であることを示した。 本年度は、より簡易な茎径のモニタリング手法として、ひずみゲージを貼付けたゴムシートの適用を試みた。茎径変化について、おおよその傾向は把握できるが、絶対量としての計測結果についての信頼性は劣る。次年度は、主な課題である熱膨張の影響をキャンセルすることで、適切な計測手法として確立する計画としている。簡易な計測手法の確立とあわせて、センサネットワークのシステムを用いることで、茎径以外の情報もモニタリングできる環境を整備した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの知見を統合し、光、熱、水分状態、ライフステージの違いなどによって生じる茎径の周期変動についてモデル化する。環境要因と周期変動(周期と振幅)の因果関係について考察するとともに、このモデルから、「花芽分化」→「休眠」→「開花」→「果実肥大」のサイクルを早くする要因と遅くする要因を抽出する。 モデル化に際しては、本研究期間中のデータを精査するとともに、引き続き、様々な条件でのブルーベリーの茎径変化のモニタリングを継続する。より簡便なモニタリング手法として、引き続きゴムシートを用いた手法について検討する。前年度に課題となった熱膨張の影響をキャンセルする方策としては、一般的な1アクティブ1ダミー法ではなく、多点計測の特徴を活かし、レファレンスを統一して複数のデータを補正する手法とすることで、ハードウエアの簡素化を試みる。さらに、センサネットワークと統合することで、ブルーベリーをポット栽培するにあたっての生育環境・個体情報モニタリングシステムとして確立させる。 以上、継続的な計測およびモデル化などから得られた知見をもとに、例えば、日変動の周期を早くする、日変動の振幅を大きくする、あるいは任意にリセットをかけることで収穫適期を調整するなどライフサイクルを制御する手法を案出する。単純な環境調節やストレス付与を行うのではなく、それらの変化に対する生体反応をモニタリングしながら、想定される反応が得られていない場合は、さらなる環境調節やストレスの付与などを行う個体ごとのフィードバック制御についても検討する。
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