研究実績の概要 |
森林などで行われている植物の個体群生態や生長特性などの植生調査では、クローナル生長(ルートサッカー・伏条などによる無性的な個体の広がり)で形成されたラメット群の存在が問題となり、掘り起こしを行う必要がある。その場合、調査対象の個体数や対象エリアなどでかなりの制約を受ける。 本研究は、既存の生体インピーダンス測定技術を応用し、植物体に微弱な交流電流を流して個体の接続性を特定する手法を確立することで、クローナル生長で形成されたラメット群の地下接続を、掘り起こしを伴わない非破壊計測で判定する技術の開発を目的とする。 本年度は、昨年度までに構築した二通りの計測系のうち、フィールドでの計測が容易なオシロスコープ(信号検知・表示部)とファンクションジェネレーター(信号発生機)を組み合わせた計測系を主に用い、現場でのデータ取得と解析により、これまでの知見の有効性と妥当性についての検証を行なった。対象樹は、クローン成長用のラテラルルートをもつハリエンジュとし、幹径十数cm程度の若木が数本存在するエリアを数か所選定して、実験を行なった。 その結果、EC(電気伝導度:V/V, %)の周波数応答特性では、明らかな差異が認められるものの、その数値は樹体の状態などによって大きく変化することが分かった。また、接続がある場合、位相差は周波数の上昇に伴い、やや大きくなるものの全体的にはほとんど変化せず、0付近を推移するのに対して、接続がない場合は、周波数の変化に伴い、大きく変化する傾向を示した。これらの知見から、ECと位相差の周波数応答特性を把握することで、フィールドにおいてもラメットの地下接続判定が可能であるといえた。
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