本研究は、森林内においてハイパースペクトルカメラを林床から樹冠に向けて使用し、樹木の3次元葉群構造と分光反射特性を同時に計測する技術の開発を目的としている。 本年度は,過去2年間と同様に,連携研究者とともに6月から10月まで東京大学北海道演習林を計5回訪問して,カラマツ林の樹冠撮影を実施した。このカラマツ林は,数年前からカラマツハラアカハバチによる食害が発生しており,8か所のカラマツ林に置いて,継続的に食害調査を実施している。樹冠の撮影機材は,ハイパースペクトルカメラ,魚眼レンズ付き可視カメラおよび近赤外カメラとインターバルカメラである。 インターバルカメラは林床に常設し,期間中の林冠の時系列画像を取得した。使用した魚眼レンズは全天360度の範囲を一度に撮影できる円周魚眼レンズで,2軸水準器を使ってカメラの光軸を正確に鉛直上向きに調整し,毎回同じ位置で撮影することで,時系列解析に使用できる可視および近赤外の全天写真を取得した。3次元葉群構造を取得するために,5m間隔の直線状の3か所においてステレオ撮影した。また,魚眼レンズ付きハイパースペクトルカメラを使って,撮影時刻に対する太陽高度および撮影角度の分光反射特性への影響を調べるために,数時間,同一地点で鉛直上向きに連続的に樹冠を撮影し,時系列ハイパースペクトル画像を取得した。以上の通り,樹冠モニタリングデータとして,研究期間の3年間を通して分光反射特性の季節変動画像データを3種類取得した。 これまでに撮影したデータを解析し,太陽高度および天候などの撮影条件や季節変動に応じて全天写真から樹木のみを抽出する画像処理技術および魚眼カメラのステレオ視による3次元葉群構造解析技術を開発中である。
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