研究課題/領域番号 |
26450371
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小池 聡 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90431353)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 黒毛和種 / ルーメン / 微生物 |
研究実績の概要 |
我が国の重要な肉用牛である黒毛和種の安定生産において、健全な第一胃(ルーメン)発酵を維持することは必要不可欠である。本研究課題では黒毛和種牛のルーメン発酵と微生物機能を網羅的に解析し、本品種の生産において真に重要なルーメン微生物機能を特定することを目指している。 H26年度は慣行飼料を給与した40頭、飼料用米を給与した20頭の黒毛和種肥育牛から採取したルーメン内容物について網羅的な菌叢解析を実施した。菌叢構成員のうち、Prevotellaceae科、Lachnospiraceae科およびRuminococcaceae科細菌が全細菌の40~60%を占める主要菌群であった。これら3科にはデンプン分解性のルーメン細菌であるPrevotella ruminicola、Ruminococcus bromiiおよびButyrivibrio fibrisolvensが属する。したがって、上記3科の細菌群が黒毛和種ルーメン内でのデンプン分解を主導的に行っているグループと考えられる。 濃厚飼料の給与量が増加する肥育中期から後期にかけてルーメン菌叢は大きく変化し、それに伴い菌叢構成の個体差は増大した。特に濃厚飼料給与量がピークに達する22ヶ月齢前後でルーメン菌叢構成の個体差は最大となった。これは主要3科の分布比率によるものであった。すなわち、Prevotellaceae科細菌が優勢である個体とLachnospiraceae科・Ruminococcaceae科が優勢である個体に別れた。菌叢構成の違いにより、発酵パターンも影響を受け、Prevotellaceae科優勢の個体ではプロピオン酸比が高いことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに60個体についてルーメン細菌叢構成は把握しており、さらにサイレージを給与した黒毛和種肥育牛24頭についても菌叢解析が進行中である。また、ルーメン菌叢構成と肉質との関連についても興味深い傾向を得ている。具体的にはルーメン内プロピオン酸比と筋肉内不飽和脂肪酸比率に正の相関が見られた。ルーメン発酵産物と筋肉内脂肪合成の関連については不明な点が多いが、H27年度以降の解析において着目するべき項目と考えている。 また、ルーメン微生物機能を網羅的に取得するためのメタゲノム解析にも着手しており、高性能ワークスーテーションPCでのデータ解析も進行中でありH27年度以降の本格的な解析に向けての準備もおおむね滞りなく進んでる。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り、黒毛和種牛の良好な生産を支えるルーメン微生物機能について探索を進める。具体的にはH26年度に実施したメタゲノム解析のデータから、すべての個体に共通に見られる遺伝子群を健全なルーメン発酵を維持するための重要な微生物機能として特定する。さらに、H27年度以降は肉質に違いが見られた個体を選抜してメタゲノム解析を実施することで、良好な産肉成績を支えるルーメン菌叢とその機能を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注した物品が3月に納品されたものの、支払い請求が4月になったため。
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次年度使用額の使用計画 |
すでに物品は納品されており、適切に管理、使用していく予定である。
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