研究課題
TLR-4は,グラム陰性細菌の細胞膜構成成分であるリポポリサッカライド(LPS)の受容体である。分娩後に起こる子宮内膜炎や乳房炎は,大腸菌などのグラム陰性細菌の感染によって発症するが,TLR-4のSNP多型とこれら疾病との因果関係を詳細に検討した研究報告はない。さらに,繁殖性とTLR-4のSNP多型との関連についても報告はない。本研究では,本学フィールド科学センターで飼育されている分娩後の乳牛(100頭,305日乳量が9,000Kg)を利用し,尾静脈から採血を行い,白血球からDNAを抽出した。TLR-4のSNP解析にはPCR-制限酵素切断断片長多型法(RFLP)を用い,各個体のTLR-4のSNP多型をC/C型,C/T型およびT/T型に分類した。分娩後3週あるいは4週に血中プロジェステロン濃度が1ng/ml以上になる早期初回排卵(卵巣機能良好)とTLR-4のSNP多型との間に関係性は認められなかった。しかし,空胎日数や人工授精回数においては,TLR-4のSNP多型がC/T型の牛で有意に低くなることが示された。これらのことから,TLR-4のSNP多型が乳牛の繁殖性に関係することが示された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り,平成26年度に行うべき研究であるTLR-4のSNP多型と繁殖性(早期初回排卵,空胎日数,人工授精回数)との関連性を解析し,相互に連関している可能性を検証することができた。しかし,ミトコンドリアゲノムのSNP型の解析においては,その同定が難航しているため,繁殖性との関連については今後進めていく。
本研究課題では,核ゲノムとミトコンドリアゲノムのSNPと乳牛の繁殖性および免疫機能との関連性を検証することを目的としている。ミトコンドリアゲノムのSNP多型の同定について,当初予定していたATP6のSNP多型が乳牛では認められなかった。したがって,ミトコンドリアゲノム上に位置し細胞の機能に極めて重要な他の因子を検索中である。現在,3つの因子に絞り込んでいるが,さらに検討を行い1つの因子に絞り込む実験を重点的に行う。平成27年度は,乳牛の免疫細胞の機能とTLR-4のSNP多型との関連性を解析する。そのため,効率よく採取した免疫細胞の機能に対するSNP多型との関連性を解析する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件)
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