研究課題
細菌感染による炎症性疾患には白血球の機能が関与していることが知られている。乳牛のなかには,疾病に罹りやすい牛と罹りにくい牛がいることから,SNP多型の違いが免疫細胞の機能に影響している可能性がある。本研究課題で取り上げたTLR-4は細菌感染に関与することから,TLR-4の一塩基多型(SNP型)が免疫細胞の機能に影響していることが考えられる。そこで、本研究では、本学フィールド科学センターで飼育されている乳牛を用い、尾静脈から採血を行い、末梢血単核球(PBMC)と多形核白血球(PMN)とに分離採集し、PMNの遊走性およびアポトーシス割合、PBMCのインターロイキン1β(IL-1β)産生量をTLR4のSNP型であるC/C型とT/C型とで比較検討した。ただし、T/T型は、頭数が少なかったため、解析には用いなかった。PMNのアポトーシスの出現率は、C/C型に比べT/C型で低かった。また、PMNの遊走性については、C/C型に比べT/C型で有意に高かった。LPS刺激して誘導したPBMCにおけるIL-1βの産生量は、C/C型に比べT/C型で有意に高かった。これらのことから、TLR4のSNPにおいてC/C型に比べT/C型の乳牛の方が、免疫細胞の活性が高いことが示唆された。TLR4のC/C型に比べT/C型で乳牛の繁殖性がよかったことから、T/C型の乳牛の子宮に細菌感染が起こったとしても、感染部位の炎症消失が早いことにより、子宮による胚の受け入れが円滑に進むことが推察された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、平成27年度に行うべき研究であるTLR4のSNP型と免疫細胞機能との関連性を解析し、TLR4のSNP型間において免疫細胞の機能の相違があることを検証することができた。
本研究課題では,核ゲノムとミトコンドリアゲノムのSNPと乳牛の繁殖性および免疫機能との関連性を検証することを目的としている。ミトコンドリアゲノムのSNP多型の同定について,当初予定していたATP6のSNP多型が乳牛では認められず、その他のミトコンドリア関連因子を検討中である。平成28年度は、本研究課題の最終年度であるため、ミトコンドリアゲノムのSNPを探索し、細胞機能との関連性を明確化していく。
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