研究課題/領域番号 |
26450374
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
杉山 稔恵 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (10272858)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ニワトリ / リン代謝 / カルシウム代謝 / 産卵 / 産卵周期 |
研究実績の概要 |
平成27年度では、以下の研究成果が得られた。 産卵鶏の血中リンおよびカルシウム濃度を計測するとともに、リアルタイムPCRにより腸管および腎臓におけるナトリウム/リン酸共輸送体サブタイプ(NaPi-IIaおよびNaPi-IIb)とカルシウム結合タンパク質(CaBP)の相対的発現量について、卵殻形成の行われていない時期(卵白分泌期)と卵殻形成の行われている時期(卵殻形成期)の間で比較した。その結果、血中リン濃度は卵白分泌期において4.79 mg/dL、卵殻形成期において6.79 mg/dLであり、卵殻形成期でリン濃度が有意に増加した。しかしながら、血中カルシウム濃度は産卵周期に伴う変化はみられなかった。NaPi-IIa遺伝子の相対的発現量は卵白分泌期と比較して、卵殻形成期の腎臓では0.73倍であった。NaPi-IIb遺伝子の相対的発現量は、卵白分泌期と比較して卵殻形成期の腎臓では0.53倍、十二指腸では0.40倍、空腸では0.33倍、回腸では2.56倍、直結腸では0.28倍で多くが低い発現量を示した。CaBP遺伝子の相対的発現量は卵白分泌期と比較すると、卵殻形成期では腎臓では0.53倍、十二指腸では0.40倍、空腸では0.38倍、回腸では0.98倍、盲腸では0.66倍、直結腸では1.13倍を示し低かった。このことは、卵殻形成期では腎臓ならびに腸管でのリンおよびカルシウムの吸収は減少していることを示している。しかしながら、血中リン濃度は卵殻形成期で増加していることから、卵殻形成時には骨髄骨からの骨吸収によりカルシウムが供給され、卵殻が形成されていることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在の養鶏産業においては、ブロイラーでは起立不能となる脚弱、産卵鶏では卵殻の薄化による破卵が頻発し、多大な経済的損失を被っている。これらは骨疾患であり、また、卵殻のカルシウム供給源は骨であることから、カルシウムに加え、骨の主成分であるリンもその原因に深く関わっていることが推測される。 家禽におけるリン代謝を解明する上で、腸管ならびに腎臓でのリン(再)吸収能の動態を明らかにすることは重要である。本研究では、リン吸収を示す指標としてNaPi-IIサブタイプに着目し、各器官での発現の有無と相対的発現量を検討した。その結果、腎臓にはNaPi-IIaが、腸管ではNaPi-IIbが発現しており、リンの再吸収と吸収に関与していることを示した。また、これらリンの腎臓での再吸収と腸管での吸収は、産卵の開始とともに増加することを明らかにした。加えて、産卵鶏では、産卵周期に伴いNaPi-IIサブタイプとCaBP遺伝子の相対的発現量が変化することを初めて明らかにした。すなわち、卵殻形成期にも関わらず、リンおよびカルシウムの腎臓での再吸収と腸管での吸収は、いずれも低下していることを示した。このことは、卵殻形成に必要なカルシウムは骨髄骨から供給されていることを示唆している。以上のように、本研究の主要目的である家禽のリン代謝が明らかになり、本研究はおおむね順調に進んでいると評価できる。今後は、これらリン代謝を調節しているホルモンを探るとともに、飼料中のカルシウム濃度がリン代謝に及ぼす影響について検討する。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに、鶏の成長ならびに産卵に伴うリン代謝を明らかにした。平成28年度では、成長や産卵に伴うリン代謝の制御機構を明らかにすることを目的とし、(1)エストロジェン、ビタミンD、FGF23などのホルモンに着目し、それらのリン代謝への関わりを解明する。とりわけ、エストロジェンとビタミンDは相互に関連しているという新知見をすでに得ており、両者がどのようなメカニズムでリン代謝あるいはカルシウム代謝へ影響を及ぼしているかを明らかにする。また、(2)産卵鶏の加齢に伴うリン代謝の動態を検討し、卵殻質とリン代謝の関連を明らかにする。最後に、(3)飼料中のカルシウムおよびリン濃度あるいはその比率がリン代謝およびカルシウム代謝に及ぼす影響を検討し、飼料中の適正なリン/カルシウム比率を探る。 これらの研究は、平成26-27年度で示したリン代謝に関連するNaPi-IIサブタイプおよびカルシウム代謝に関連するCaBPの発現量を指標として実施する。
|